契約書や遺言書により可視化される「結婚の責任」
25カ条の内容は多岐にわたる。例えば、不貞行為を働いた際の罰則や、契約解除(法律婚における離婚と同等)の際の子供の親権、財産の分配にまつわる取り決めなど、かなり踏み込んだ内容も含まれている。これから人生をともに歩もうとするふたりが交わす書面としては、ややドライな印象も受けるが……。
晋太朗さん「でも、実はそれは法律婚でも同じことなんです。法律婚における民放の条文には、例えば配偶者に不貞な行為があった場合、離婚の訴えを提起することができると定められています。つまり、法律に則って結婚している夫婦も、目に見える形の契約書こそ交わしていなくても、婚姻届を出すことで発生する多くの権利や義務を負っているんです。ただ、それを意識されている方は少ないのではないでしょうか」。
確かに、結婚にあたり法律婚の民法の条文をきちんと把握してから臨むカップルは、そう多くないだろう。その点、晋太朗さんと萌子さんは、契約書を交わすことで結婚に伴う責任や違反を犯した際のリスクをしっかりと認識し、そのうえで夫婦生活をスタートさせている。そこには法律婚以上に堅実で、強い覚悟が感じられる。
晋太朗さん「結婚って、夫婦や家族関係が円満なうちは何も問題はないんです。それが例えば離婚するとなった途端、親権や財産をはじめさまざまな問題が一気に噴出する。どちらかが死んだ際には遺産の行方なども発生します。それらの問題を先送りせず、あらかじめ想定しておくことは、事実婚、法律婚に関わらず大事なことだと思います」。
萌子さん「もちろん、感情的なことを考えると、そこまでやらなくてもいいんじゃないか、せっかくの幸せな気持ちに水を差してしまうんじゃないか、という意見もあると思うんです。ただ、いつ何があるかわからないし、もしかしたら災害や事故でどちらかが急に亡くなることだってあるかもしれません。ですから、私たちは契約書と別に遺言書もお互いに用意して、もしものときに備えています」。
晋太朗さん「遺言書を書いておくことで、自分に何かあったときでもパートナーや子供を安心させられます。それに、遺言書を書くことで自身のライフプランを見つめ直し、これから先の人生について真剣に考えるきっかけにもなりました。20代、30代でこれから結婚しようという人って、自分が50年後に死ぬことなんてなかなか考えられないと思うんです。それを今のうちから考え、パートナーと共有しておくのは、夫婦生活や自身の人生を考える上でもいい経験になるはずです」。
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