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親はあっさり許してくれた

最近では新しい夫婦の形として認識されつつある事実婚。しかし、そうはいっても未だ偏見や誤解は残り、法律婚に比べ軽いもの、無責任な関係といったイメージもあるだろう。実際、萌子さんも高齢の祖父母には、ちゃんとした説明はできていないそうだ。
晋太朗さん「そこは、世代間の結婚観の認識の違い、とらえ方の違いがあるので難しいところです。なかなか埋められないと思いますので、どう説明したりやりとりしたりしていくか日々悩んでいるところです」。
ただ、互いの両親へは、さすがに説明しないわけにはいかない。特に気がかりだったのは、「絶対に反対すると思っていた」という萌子さんの父親の反応だ。しかし、意外にもあっさり受け入れてくれたという。
萌子さん「父は賛成も反対もなく、本人たちがしたいようにすればいいと。子供に害がないようにしてあげさえすれば、あとは大人の責任だからと言ってくれました。あとは、保険に関わる仕事をしていたので、事実婚に関する事情や知識も知っていたのもあるのかなと。じつは、その日までは法律婚の可能性もゼロではないと思っていたんですよ。父に説得されて、もしかしたら彼も考えを改めるんじゃないかと。だから驚きましたね、するっと許されてしまったので(笑)」。
晋太朗さん「うちの親も同じく寛容でしたね。というか、『好きにすればいいんじゃない』という感じで。比較的放任主義の家庭で、自分で決めたことを自分の責任の範疇でやるぶんにはあまりNOとは言わず、『なんでもやってみなさい』という両親でした。今回も、自分たちの決めたことは責任持ってやりなさいと言ってくれたのは大きかったです」。
かくして、ふたりは晴れて事実婚に向けた手続きを進めていく。「夫婦別姓も含めて、互いに対等な関係を維持しつつ、一般的な法律婚と同等レベルの権利、夫婦の責任を実現したかった」という晋太朗さん。そのためには契約書や遺言書の作成など、やるべきことも多かった。しかし、そのぶん家族になることの意味や重さをより感じることができたという。
後編では、ふたりが交わした「契約書」の内容や、晋太朗さん、萌子さん夫妻が考えるこれからの結婚制度の在り方について聞く。

榎並紀行=取材・文


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