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カーリングの“三種の神器”は、ストーン、ブラシ、ストップウォッチ


リンクの脇で準備運動をしたら、待ちに待ったリンクへ。夫・重輝さん、息子の奏達くんはあっさり氷上に降り立ったが、妻・昌子さんはおっかなびっくり。ツルツルと滑る方の足が慣れないと、ちょっと怖い感覚も。とはいえ、酒井さん一家はにわかに活気づく。
山口選手は続いて、カーリングに使用する3つのアイテムを紹介してくれた。
■ストーン
まずはストーン。滑らかな円形の石に、カラフルな取っ手のついた“アレ”である。

「カーリングは、このストーンを投げてポイントを競い合うスポーツです。石の部分にはスコットランドの特別な島でしか採掘できない、特別な岩を使っています。一見どれも同じストーンに見えますが、実は一つひとつ形状や重みが微妙に異なり、描く軌道も違う。その日のストーンの特徴をつかむことは、プロの試合でも重要なポイントです」。
投げる瞬間にスナップを効かせて、回転をかけることもできる。こうしたストーンの繊細さは、カーリングを奥深いスポーツたらしめている理由のひとつらしい。
■ブラシ
お次はブラシだ。よくテレビで見かける、ブラシでストーンの行く手をシャカシャカと磨いている姿。あれは何のためなのか?

「氷の表面を磨いて滑らかにすることで、ストーンの進路や勢いをコントロールするアイテムです。回転をかけたストーンをさらに曲げる、なんて使い方もあります。また、使い古してボロボロになったブラシは、氷を汚したり傷つけたりして滑りを悪くしてしまいます。“マイブラシ”を購入される場合は、お手入れにも気をつけましょう」。
柄の部分は軽くて丈夫なカーボン、グラスファイバーなどの素材を採用。ヘッドの部分はナイロンなどの合成繊維や、動物の毛で作られているとか。
左が現在主流の合成繊維でできたブラシ、右が毛ブラシ。今回は合成繊維でできたものを使用した。
■ストップウォッチ
最後はストップウォッチ。これには全くピンとこないようで、首をかしげる一同。
「やや上級者向けですが、ストップウォッチはストーンの速度を計測して、重さを見極めるために使います。僕たちはその結果を見て、ストーンの投てきやスウィーピング(ブラシで氷を擦る行為)の力加減を判断しているんです」。
こうした数学的な駆け引きも、カーリングが「氷上のチェス」と呼ばれる由縁。今回の体験では使用はしないけれど、ワンランク上のプレーを目指すなら、ぜひ活用してみたいところだ。

さらにカーリングの奥深さは、アイテムだけでなく氷上にも潜んでいる。
「実は氷上には、目に見えない『ペブル』という氷の粒子が撒かれています。これにより摩擦を減らし、ストーンを滑りやすくしているんです。ブラシをゴシゴシすることでストーンの勢いが増すのも、粒子の表面が瞬間的に溶けるから。ですが、試合が終盤になると、粒子はストーンやブラシの摩擦で減っていき、氷上は滑りにくくなります。こうした消耗具合を読みながらプレーするのも、カーリングの面白さのひとつです」。
わずかな氷上の凹凸、アイテムのコンディションの差さえもが、試合の勝敗を分かつカーリング。その奥深さの一端に触れることはできるのだろうか。さあ、次回はついにミニゲームに向けた練習開始だ!
澤田聖司=撮影 佐藤宇紘=取材・文


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