100年余りの腕時計史の中で数多のモデルが生まれては消えた。そうしたアーカイブを現代の高い技術で蘇らせる。それは、復刻の名においてまったくの新作を創造するのに等しい。歴史と“ツナガル”ようでいて、将来へ続く道しるべにもなっている。
前編に引き続き、後編をお送りする。
LONGINES ロンジン
ロンジン スキンダイバー
ブランド初のダイバーズが最新技術で蘇った
1959年に発売されたブランド初のダイバーズウォッチを現代に復刻。オリジナルの特徴を残しながらも、梨地仕上げのマットダイヤルやベージュの発光塗料、搭載するのは最新のエクスクルーシブキャリバーL888と、随所に現代のエッセンスを取り込んでいる。当時のダイバーズによく見られた格子模様のラバーストラップも再現し、復刻時計で一目置かれるブランドの面目躍如を果たしている。
TISSOT ティソ
ティソ ヘリテージ 2018
’40年代を彷彿させる、今新鮮なヘリテージウォッチ
1853年から続く名門だけにアーカイブも豊富。1943年に存在したアラビアインデックスを備えるスモールセコンドモデルのデザインから着想を得た本作は、当時を意識して手巻きムーブメントを搭載。リーフ針やヘリテージロゴがクラシカルなダイヤルは、仕上げ分けたサブダイヤルや隙間を広く設けたフォント使いなどで視認性を向上させている。全方位的に良好なベーシックモデル。
ZENITH ゼニス
パイロット クロノメトロ TIPO CP-2 フライバック
現代の技術を駆使し、ヴィンテージよりも魅力的に
1960年代、イタリア軍にローマのA.カイレリ社を通じて、2500個ほど納入したというクロノグラフが、通称“カイレリ”モデルだ。希少性に加え、高性能であったことからヴィンテージ市場で高値をつけているという。
その伝説的モデルを最新技術で復刻したのが本作。もちろんゼニスが誇るクロノグラフキャリバー、エル・プリメロのフライバックを搭載。絶妙なエイジド加工を施したSSケースとダイヤル、レザーストラップと、ヴィンテージ以上の魅力を備えた意欲作。
CORUM コルム
アドミラル レジェンド 42 クロノグラフ
ディープブルーに秘められた雄大な海とその歴史への情景
1957年から始まるヨットレース、アドミラルズ カップの黎明期から関わりは深く、’60年にウォッチコレクション「アドミラルズ カップ」をリリース。’83年にはデザインを一新し、国際海洋信号旗でインデックスの数字を表現したモデルは、日本でも大ヒットを記録した。本作は“ガンブルー”の愛称で親しまれた’83年発表モデルを現代の感性でリファイン。艶やかなディープブルーが最大の見どころだ。
※本文中における素材の略称は以下のとおり。
SS=ステンレススチール
柴田 充、髙村将司、中村英俊、戸叶庸之=文