都会でも雪が積もることが珍しくなくなってきた。もはや冬はどこへ出かけるときも「まあ大丈夫」なんて過信は、同乗する家族を危険にさらすことにもなる。
だからといって季節の変わり目に毎年タイヤを履き替えなければならないの?
万が一に備える足元問題を、オートバックスの新店舗で、カーアイテムだけでなくカーライフそのものを提案する「A PIT AUTOBACS SHINONOME」のカーライフアドバイザー木内さんに聞いてみた。「結局、スタッドレスタイヤって必要なんですか?」。
冬の足元問題を考えるための「3つの備え」
チェーンを巻くか、スタッドレスタイヤを履くか、運を天に任せるか。30年以上前の映画でスキーへ向かう4WDのトヨタセリカが冬の志賀高原を突っ走った大昔と違い、今の足元問題を解決する方法は、まずは下記の「備え」のどれを想定するか、から始まるようだ。
1:本気の雪山や雪国へ行くための備え
2:いつ雪道に遭遇しても平気でいるための備え
3:街中で突然の雪にスベらないための備え
この中で自分はどれに当てはまるのか。それを決めることが冬の足元問題を解決する第一歩だという。
「3つの備え」に対する5つの選択肢
1:本気の雪山や雪国へ行くための備え、なら「スタッドレスを履く」
「スタッドレスタイヤとは、雪道や凍った路面に吸いついて密着し、同時に引っかくことで滑らずに進める、特殊な性質のゴムを持つタイヤです。チェーンが必須となるチェーン規制時以外は最も安心して雪道を走れますし、雪のない道も快適に走ることができます」(木内さん、以下同)。
表面が普通のタイヤより柔らかく、交換の目安は普通のタイヤが5年なのに対して3年程度と短い。また通常の道を走ると減りが早くなる。だからシーズンごとに履き替える必要があり、外したタイヤ&ホイールの保管場所が必要になる。マンション住まいなどで、保管が難しい場合はカー用品店などで保管するサービスもあるので検討してみるといい。
国内屈指の販売数を誇るスタッドレスタイヤは 「ブリヂストン ブリザックVRX2」雪道や凍結路で滑るのは、路面にある水の膜に車が乗ってしまうから。木内さんも絶賛する同社の「発泡ゴム」がその水の膜を取り除くことで、優れた制動力を発揮してくれる。
1本あたり8350円〜(135/80R12、オートバックス標準価格)/ブリヂストン(オートバックス 0120-454-771)
「雪の多い地方やエリアに行く予定があるなら、雪道と凍った道路の両方に対応して、長距離でも快適に走れるスタッドレスタイヤに履き替えるのがおすすめです。チェーンでも良いのですが、乗り心地がどうしてもガタつくので、慣れてない方だと、長距離を走るのは辛いかもしれませんね」。
2:いつ雪道に遭遇しても平気でいるための備え、なら「手間なしのオールシーズンタイヤにする」
「オールシーズンタイヤは、いわばノーマルタイヤとスタッドレスタイヤの中間的存在。名前のとおり1年中履けるので、タイヤ交換の手間がありません。このタイヤだけで良いので履かないタイヤを置いておくスペースも不要ですし、交換しないうちに雪道に入って『しまった!』ということもなく安心です」。
冬に強いオールシーズンタイヤのオススメは「マキシス オールシーズンAP2」スタッドレスタイヤに近い表面構造をもつ、雪道での性能を重視したオールシーズンタイヤ。凍結路も走れて、比較的低価格なのも魅力。1本あたり4020円~(155/65R13、オートバックス標準価格)/マキシス(オートバックス 0120-454-771)
一方で「ある意味“どっちつかず”でもあります」と木内さん。凍った路面ではスタッドレスタイヤよりは滑りやすく、アスファルトでは普通のタイヤより減りが早い。普通のタイヤが5年もつとすれば、オールシーズンタイヤは4年での交換が目安。
しかし木内さんは、「最大の長所はやはり1年中履けて、急にある程度の雪道に入っても気にせず走れること。スタッドレスでありがちなうっかり履き替え忘れてた! というミスや、チェーン巻かなきゃ! と焦ることもありません」という。
なかには、より“夏重視”なオールシーズンタイヤも「ミシュラン クロスクライメート」「雪も走れる夏タイヤ」とメーカーが謳うように、夏の路面ではノーマルタイヤと同等の制動力を発揮しながら雪道も走れる。耐久性も高い。ただし凍結路は走らないようメーカーも注意している。1本あたり1万2285円~(165/70R14、オートバックス標準価格)/ミシュラン(オートバックス 0120-454-771)
「手に入れやすいタイヤチェーンを巻く」
「いつ雪道に遭遇しても良いように。と備えるのなら、タイヤチェーンも選択肢に入れたいところです。なんと言ってもタイヤを買うより安く済むし、小さく収まるものならずっとトランクに積みっぱなしでもいいでしょう。金属系チェーンと樹脂系チェーンの2種類があります」。
スムーズに装着! 自動締め付けのオススメは「カーメイト セルフィット」装着は簡単で、樹脂製チェーンを手順に沿ってタイヤに被せたら、慣らすために車を少し前進させるだけ。その後は走り出すと自動的にチェーンがタイヤを締め付け、ピッタリとフィットする。2万9999円~(オートバックス標準価格)/カーメイト(オートバックス 0120-454-771)
「チェーンしか走れない『チェーン規制』レベルの雪でももちろん大丈夫。ただスタッドレスやオールシーズンタイヤと比べての欠点は、乗り心地が悪くなること。長距離を走るのは向いていません」。
乗り心地快適なオススメは「イエティ スノーネット」業界初のラバー製のチェーン。大きく緩めたチェーンをタイヤの接地面以外に被せたら、車を少し前進させ、残りを被せてチェーンに備わるレバーをロックすればOK。走行時のガタつきが少なく、快適な乗り心地が特徴。3万2999円~(オートバックス標準価格)/イエティ(オートバックス 0120-454-771)
樹脂系のほうが金属チェーンより簡単に装着できるが、慣れていないと最初は装着に時間がかかる。しかし安価に備えられて、安心感は抜群、車に積んでおける省スペースもありがたいポイントだろう。
3:街中で突然の雪にスベらないための備え、なら
「天候の急転など、街中での緊急事態から脱出するなら『スノーソックス』と『滑り止めスプレー』がオススメ。どちらもチェーンよりさらに簡単でコンパクトなので、クルマに常備しやすいです」。
「短時間の一時しのぎのスノーソックス」
スノーソックスは、タイヤに特殊な布を被せて雪道を滑らずに走れるというもの。
短時間をしのぐオススメは「オートソック 布製滑り止め」ノルウェーで開発されたナイロン布製の滑り止め。装着方法はチェーンより簡単だ。輸入車や国産自動車メーカーの純正オプションとしても採用されている信頼のおける一品。9299円~(オートバックス標準価格)/オートソック(オートバックス 0120-454-771)
「瞬間的にしのげるスプレー」
一方の滑り止めスプレーは、タイヤの表面に滑り止め成分をスプレーすれば雪道を走れるようになる。あくまで緊急脱出用のため、走るほどに制動力が低下する。
一瞬をしのぐオススメは「セイワ スノーOKスプレー」スプレー式の滑り止め剤。1缶で普通乗用車のタイヤなら20本程度の塗布が可能だ。昨年の首都圏での大雪の際は、品切れになるほど人気になったという。2799円(オートバックス 0120-454-771)/セイワ(オートバックス 0120-454-771)
「どちらもあくまで一時しのぎ、街中での急な降雪で、「家まで帰れない、あと数kmが」。という際や「道の真ん中で動けなくなった、交差点内で立ち往生」という緊急的な場合への備えとして、クルマに積んで置くと安心かもしれません」。
この冬、どんな頻度で雪道に出合いそうか? ここを考えることから安全で快適な“ファミリーカー”ライフが始まるようだ。
教えてくれた人A PIT AUTOBACS SHINONOME
木内裕輔さん
「クルマも人もピットインできる場所」をコンセプトに、スターバックスやキッズスペースを併設する「
A PIT AUTOBACS SHINONOME」で活躍。最新アイテムを熟知した広い知識と、やカー用品に詳しくない人にもわかりやすい丁寧なアドバイスを心がけるカーライフアドバイザーだ。
籠島康弘=取材・文