人のモノサシではなく、自分たちの価値観で、よりリアルに、格好よく。ファッションにおける「ストリート」の根幹にあるこんなマインドが、何かと小難しい(気がする)ワインの世界でも拡大中。それがナチュラルワインである。
しがらみ不要、無用なルールは御免蒙る。とびきり美味い一杯を追求するストリートマインド全開なナチュラルワインは、オーシャンズ世代にこそ相応しい!
幡ヶ谷のワインショップ「フロウ」の店主・深川健光さんから
ナチュラルワインの“いろは”を学び、
コスパに優れたワインやレアなワイン、
寝かせて楽しむワインなど、主に家でのナチュラルワインの楽しみ方をひと通り教わった。となれば、次に知りたいのは“家の外での楽しみ方”である。
近年、ナチュラルワインを扱うレストランやバーは増えてきている。しかし、ナチュラルワインの味のバリエーションは豊かで、オーダーの仕方から料理との合わせ方まで、従来のワインの常識がイマイチ通じない部分がありそうなのだ。
そこで今回は、ナチュラルワインとの出合いから10年の時を経て、今年ついにワインバー「ソルト アンド プラム」をオープンした小越樹代さんのもとを訪問。お店でナチュラルワインを飲むとき、どう振る舞えば100%楽しめるのか、和服に身を包んだ美人店主にアドバイスをもらった。
アドバイス① ナチュラルワインのオーダーについて
──たいてい店員さんに「どんな味が好みですか?」と聞かれますが、ブドウの種類もよくわかりませんし、「フローラル」や「アロマ」といった表現も巧みに使えずいつもドギマギします。どう注文するのが正解なのでしょう?
小越「そうですね、『このワインが美味しかった』と銘柄を伝えていただいてもいいですし 、好きな原産国でもOK。ワインの軽さや重さ、甘い・辛い、 果実味がある、 華やかな香りがするなど、思ったことを伝えてもらえればいいと思います……けど、もっと簡単に考えてもらって大丈夫ですよ。
例えばグレープフルーツが好き、マンゴーが好きといったように、自分の好きな果物や食べ物を伝えてもいいと思います。果実感があるフルーティなワインもありますし、トロピカルなものもあります。甘いワインが苦手であれば、コーヒーとかタバコ、ビールのような香りのするワインと言っていただいてもイメージは湧きますよ」。
アドバイス② ナチュラルワインがより美味しくなる飲み順について
──ナチュラルワインの飲む順番ですが、やはり一般的なワインのように、何か暗黙のルールが存在するんでしょうか?
小越「スパークリング、白、ロゼ、赤の順番が一般的なワインの飲み順だと思いますが、ナチュラルワインに関しては、この順序は通用しません。赤よりも強い白があったり、スパークリングでも味がふくよかで、食事に合うものもありますから。赤と同等のロゼもあります。わからなければ『食事に合わせて出してください』と伝えてください。
やはり『型にはまらない』のがナチュラルワインの特徴なので、ワインのルールにとらわれず自由に頼んでほしいですね。肩肘張らずにワイワイ飲むのが本来のワインの飲み方。ワインはワイングラスで、って考えが浸透していますが、生産者のなかにはコップでぐいぐい飲んでいる人もいるんですから(笑)」。
アドバイス③ ナチュラルワインに合う食事について
──ナチュラルワインに合う食事はどうでしょうか? やはりイタリアンやフレンチなど、洋食に合わせるのがベター?
小越「ナチュラルワインは味もさまざまなので、一概にそうとは言えません。ナチュラルワインはミネラル(土壌由来)ひとつとっても、“土っぽいもの”か“海っぽいもの”かで違います。ですから、“出汁っぽいワイン”というのもあるんですよ。
ナチュラルワインの場合、旨味を残すために不純物の除去作業をあまりしない生産者が多い。ブドウと大地からくる味がそのままダイレクトに伝わりやすいので、旨味や香りが豊かなんです。例えば、ジョージア(グルジア)産のワインは出汁っぽいものが比較的多く、煮物なんかにもよく合います。
ナチュラルワインに和
食を合わせる人も結構いますし、『豆っぽいワイン』には豆を合わせちゃえばいい。『自分の食べたい料理』に合うナチュラルワインは探せば必ず見つかるはずです」。
小越さんのお話を聞いて、ナチュラルワインの楽しみ方がだいぶ見えてきた気がする。やはり人のモノサシより自分の価値観。ストリートマインドに溢れたワインであることは間違いないようだ。
小越さんからのアドバイスをヒントに、次回からのテーマは「ナチュラルワインと食事の自由な食べ合わせ」。さらにナチュラルワインの魅力を深掘りしていこう。
[取材協力]ソルト アンド プラム東京都港区白金台5-18-18 1-A070-4101-5674ぎぎまき=取材・文