OCEANS

SHARE

若者から火がついて、オッサンが鎮火させる

しかし、上述のFacebookやLINE、YouTubeなども最初はすべて若者から火がついて広がっていったものであり、今は若者向けメディアとされているものが、そのうちオッサンだらけになるかもしれません。
実際、元々ハーバード大学の学生達から始まったFacebookは日本では既に「オッサンのSNS」扱いされており、大学生などはアカウントも持っていない人も多いです。事実、Facebookの最も多い日本人ユーザー層は40代です(まあ、団塊ジュニア世代で人口も多いのですが)。Facebookから若者が離れているのかどうか本当の実態は不明ですが、オッサンが増えるとうざくて逃げていく気持ちはわかります。
 

動画での情報収拾は「ふつうのこと」

さて、このようにメディアは栄枯盛衰を繰り返して進化しており、現時点では上記TikTokのような動画がどんどん盛り上がってきています。これを踏まえれば、今回の表題のように、オッサン世代から見るとわけのわからない動画も、若者にとっては主な情報収拾源になっていると考えるべきなのでしょう。
今までメディアの主役であった新聞や雑誌の多くは、購読者の平均年齢が50歳以上になっているように、もう「紙」の「テキスト」から情報を得る時代は徐々に終わっていっていると見るべきです。
ところが人は、メディアというものにおいては、一度はまったものをずっと使い続けるという性質もありますので、若者が火をつけたメディアになかなか乗らないで一生よくわからないというオッサン世代も多いと思います。そうすると、自分の世代の価値観が残存し、「テキスト=フォーマルなもの=仕事」、「動画=インフォーマルなもの=遊び」と考えても仕方ありません。
 

わからないものをすぐ批判しない

ただ、LINEやFacebookのように、少し経てば自分たちでも使うようになって「ふつうのこと」になるくせに、最初はすぐに批判的な目で見るのはそろそろやめたほうが良いでしょう。
「本は手触り感のある紙がいいに決まっている」と言っていた人が、きっかけさえあれば知らぬ間に「Kindle版が出ないと本は買いたくない」などと言っていたり、「会議中にスマホをいじるな」と叱っていた上司が、今ではスマホをいじりながら部下の報告を聞くようになったりと、オッサン世代の「最初はわからないから批判して、その後、知らぬ間にしたり顔で使っている」というメディアに対する姿勢はとても格好悪いのではないかと思います。
そういう方々は「知らないこと、自分にとって違和感のあることをむやみに批判しない」と念じておくのが良いと思います。大昔は我々オッサン世代も「いい成人がマンガなんて読んで」と先行世代に眉をひそめられたではないですか。今ではもうマンガは子供の読み物なんて誰も言いませんよね。「老いては子に従え」と、昔の人はよく言ったものです。
 
曽和利光=文
株式会社 人材研究所(Talented People Laboratory Inc.)代表取締役社長
1995年 京都大学教育学部心理学科卒業後、株式会社リクルートに入社し人事部に配属。以後人事コンサルタント、人事部採用グループゼネラルマネジャーなどを経験。その後ライフネット生命保険株式会社、株式会社オープンハウスの人事部門責任者を経て、2011年に同社を設立。組織人事コンサルティング、採用アウトソーシング、人材紹介・ヘッドハンティング、組織開発など、採用を中核に企業全体の組織運営におけるコンサルティング業務を行っている。


SHARE

次の記事を読み込んでいます。