連載「極上の豆を求めるコーヒーハンターの仕事」Vol.2
コーヒーは大人の飲み物だ。深い土色の液体には、芳醇な香りとコク、味わいの要素が複雑に絡み合って備わり、相応の理解力を求められるからだ。その奥深い世界にとりつかれた“コーヒーハンター”の仕事とは? 情熱が生み出す、極上のコーヒーとは!? 深すぎる思いと、美味しすぎる一杯との出会いを、しばしご堪能あれ。
焙煎した豆を挽いてお湯を注ぎ、おいしい一杯に落とし込む。コーヒーに命を吹き込む「抽出」という工程だ。古今東西のバリスタが研鑽を重ねてきたこの技術に、常識を覆すワザが編み出された。
「私たちは、独自の『トルネード抽出』という方法でコーヒーを淹れています。コーヒーの雑味を最小限に抑えながら、フルーツ由来の豊かな甘みを最大限に引き出す方法です」。
そう語るのは、コーヒーのプロフェッショナル集団「Mi Cafeto(ミカフェート)」の中條真登さん。農園の開拓から栽培・収穫、輸送方法まで、おいしいコーヒーのためには一切の妥協を許さないコーヒーハンターJosé. 川島 良彰さんが率いる彼らは、その総仕上げにもこだわっている。
ミカフェートが生み出した見たことも、聞いたこともない「トルネード抽出」とは果たしてどんなコーヒー抽出技術なのか、その秘密に迫った。
激しく、そして荒々しい。従来の淹れ方を覆す職人技「一般的なハンドドリップの淹れ方は、細いお湯をゆっくりと数回に分けて豆へと注いでいくもの。トルネード抽出は、むしろ真逆です。お湯を一気に注ぎ、精密に渦を描いて“トルネード”します」(中條さん、以下同)。
その激しい動作には、驚く一見さんも多いとか。さっそくその衝撃の淹れ方を見せていただこう。使用した豆は、タイで栽培された銘柄「ドイ トゥン」。
まずは、挽く豆の量を決める。
豆を挽いたら、微粉取りを使ってふるいにかけ、微粉を取り除き、粉末のサイズを均一化する。よりクリアな味に仕上げるのが狙いだ。
専用のウェーブフィルターに豆をセットしたら、おいしいコーヒーを淹れるために欠かせない「蒸らし」の工程だ。
繊細にお湯を注ぎ、豆の風味を引き出せているか、入念にチェック。
蒸らしが完了したら、いよいよトルネード抽出のスタート。
おおっ……と、思わず感嘆の声が上がる。こんな淹れ方は見たことがない。グルグルと素早く円を描きながら一気にお湯を注ぐ様はまさにトルネード、これは大迫力。
しかし、よく見るとお湯の太さはまったく変わらず、常に一定だ。
あふれんばかりにお湯を注ぎ……。
おいしく飲める量だけを抽出したら、二番煎じにあたる部分はカット。至極の一杯の出来上がりだ!
口に含むと、その圧倒的な“違い”におののく。渋味やえぐみは一切なく、完熟したフルーツのように甘やかなフレーバー。さらには質のいいワインのごとく、芳醇なアフターテイストが押し寄せては、いつまでも余韻を残すのだ。どこを切り取っても、知っているコーヒーの味じゃない。
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