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2018.11.22

ライフ

平山祐介の推薦図書②確固たる意思で生きようと決めた『永遠の0』

オーシャンズゆかりのモデルたちはどんな余暇を過ごしてる? 彼らの普段見えない部分を取材する企画の一人目は、俳優としても引っ張りだこの平山祐介さん。“本の虫”としても知られる彼に聞いた、オーシャンズ読者が絶対にハマる推薦図書とは?
平山祐介さんが「人生で強く影響を受けた本」の2つ目は、百田尚樹の『永遠の0』。2013年には映画化され、日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞。本のほうも知らない人はいない、国民的ベストセラーとなった。
まだ10代の若者たちがゼロ戦の特攻隊員として散っていった太平洋戦争。彼らの恐怖や悔しさ、断ち切れない生への執着。本を読みながら号泣を禁じ得なかったという平山さんの心は、この本を通じてどのように変化したのか。インタビューは平山さんの“日本社会”に対する考え方にまで話が発展した。

『永遠の0』
百田尚樹・著/講談社
人生の目標を失いかけた青年とその姉は、特攻隊員として戦死した祖父・宮部久蔵について調べ始める。戦争を生き延びた祖父の元戦友たちが口々に語る戦争の断片図。国のために命を捧げるのが当然だと言われた戦禍の日本、その時代を生きた若者たちの壮絶な人生を、2人は知ることになる。
──平山さんが強く影響を受けた本、2つ目は『永遠の0』ということですが。
平山「今、この『永遠の0』を知らない人はいないですよね。映画化もされてるし。でも、僕がこの本に出会ったときは、誰に話しても存在を知らなかった。児玉清さんが『僕は号泣するのを懸命に歯を喰いしばってこらえた。だけどダメだった』って言ってましたけど、僕もまさにその通りでしたね。
語弊がある言い方になるかもしれないけど、戦争モノの本がすごく好きなんですよ。特に、特攻に興味がある。興味があったけど、誰もが思っているあの時代の印象しかなかった。
この本を読んで、ゼロ戦で特攻に行った人がどういうことを考えていたのかを改めて知らされました。あぁ、そうか、『御国のために英霊になりに行きます』って潔く特攻に行ったと思ってたけど、全然そうじゃなかったんだなぁ、って」。
──というと?
平山「やっぱり家に帰りたいと思っているし、愛する家族にも会いたい。最期は『母ちゃん』って言って死んでいった。でも、国に残している人たちを心配させないように、『行ってきます』と手紙に残した。それを知って、なんともたまらない気持ちになりました。
本の中は、生き延びた元特攻隊員たちから聞いた話でストーリーが紡がれています。僕らが生きてきた時代は最初から平和だったし、裕福だった。学校で戦争について勉強してきたつもりだったけど、教科書には戦争に行った人たちの気持ちは乗っかってなくて、史実としてしか知らない。
でも、そこに参戦した人たちは自分と同じ人間なわけで、その人たちにはその人たちの人生があった。そんな当たり前のことを、この本で突きつけられた気がしたんですよね」。
──特攻隊員といっても、若者や子供たちですからね。
平山「そう。いかに勇猛果敢っていったって、戦争に行ったのは10代の子供たち。生きたかったんだろうなって。生きることって何なんだろうって考えさせられましたね。自分の身を挺して戦った人たちがいて、今のこの日本がある。ゼロ戦パイロットの主人公・宮部久蔵さんが、最後にゼロ戦の操縦を代わるところなんて、僕にできるかなって思っちゃいますし」。
──代わりに自分が死ぬってことですからね……。
平山「ある老人の話なんだけど、戦後復興期に人に騙されて悔しい思いをした、と。でもそれは終戦直後の混乱と貧困による一時的なものだったって話すくだりがあって。えーと、どこのページだったっけな……( 本をパラパラとめくる)。これだ。
『本当に日本人が変わってしまったのはもっとずっと後のことだ。日本は民主主義の国となり、平和な社会を持った。高度経済成長を迎え、人々は自由と豊かさを謳歌した。しかしその陰で大事なものを失った。戦後の民主主義と繁栄は、日本人から『道徳』を奪った──と思う。今、街には、自分さえ良ければいいという人間たちが溢れている。六十年前はそうではなかった。わしは、長く生き過ぎたようだ』というセリフ。
これとは違う本で『歸國(きこく)』(倉本聰・著/日本経済新聞出版社)って本があって、当時の兵隊さんたちがタイムスリップして現代にくる話なんですよね。そのなかで今の日本を見たときに『俺たちは今のような日本を作るためにあの戦争で死んだつもりはない』っていうセリフがあって、僕はそのセリフが忘れられないんです」。


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