ただくつろぐだけでも気持ち良い時間を過ごせ、サーフィンをした瞬間に人生は大きく変わってしまう。ひとつのシーンからそんな海の魅力を発見していくコラム。
今回は「Future Hero」
2018年9月末時点で、五十嵐カノアは世界ランキングで9位につける。彼は、日本人の両親のもと、カリフォルニアで生まれ育ったトッププロサーファー。2020年の東京オリンピックで日本人選手としての活躍が期待されている人物だ。
9位にいる世界ランキングはワールドサーフリーグ(WSL)主催のツアー、ワールドチャンピオンシップ(CT)におけるもの。CTとは34名の精鋭によってその年の世界チャンピオンを決めるツアーであり、まさしくカノアはこの世のサーフコンペティション界における序列で9番目にいるのだ。しかもまだ21歳。
かつて、11度の世界タイトルを獲得した絶対王者ケリー・スレーターが残した「いつかは世界王者になる逸材だ」という言葉を思い出す。試合での安定感も増し、好結果を連発。世界中のサーファーが無尽蔵に参加するCTの下部ツアー、QSでランキングトップに君臨している状況が、日本人未踏の地へ駆けていくカノアのすごさを物語る。
CTは世界チャンピオンを決するツアーで、選手たちは1年をかけて世界各地で開催されるコンテストを転戦する。全9戦となった今シーズン、五十嵐カノアは2つのコンテストで3位となり、8戦が終了した現時点でレイティング9位をマーク。最終レイティングでのトップ10入りも見えてきた。
過去、日本人でCTをフォローできたサーファーはいない。QSでトップに立ったサーファーもいなかった。まさしく五十嵐カノアは道なき道を行く先駆者なのである。
ライアン・ミラー=写真 小山内 隆=編集・文