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ターニングポイントは本屋を営む親族の死


鳥取県で、100年以上続く本屋の家系に生まれた中野さん。当然、本に親しむ時間も多かったが、本に関する仕事をしようと意識したことはなかったという。
「本が特別、大好きというわけではなかったかもしれない。幼い頃は、毎年お年玉が図書券なので恨めしく思っていたくらいです(笑)」。
大学卒業後は本と関わりは薄いデザイン業界へ。そんななかで「本」との関わり方を見つめ直すきっかけになったのは、今から3、4年前に立て続けに起きた父と、祖母の死だった。
「祖母の遺品を整理していたら、鳥取県でどのように本や書店が普及していったかという歴史について書かれている文献を見つけたんです」。
150年前、江戸時代の終焉と共に武士中心の文化も終わりを告げ、本を通じて知識や文化を広めることが着目され始めた。そして鳥取県米子市に、鳥取で初めての「今井書店」がオープンする。本を売ることで人々の生活を豊かにする。そして次の世代のために活字で情報を発信していくことの重要性を、今井書店の創業者は感じていた。そんな内容が文献には記されていた。
「祖母も父も亡くなってしまった今、次の世代である自分に一体なにができるだろう。そう考えたとき、やっぱり『本』というキーワードは外せないのだろうと感じました」。


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