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2018.10.22

ファッション

【前編】プロに聞いたデニムの「困った!」を解決する表&裏ワザ

デニムは僕らのいちばんの相棒。相棒のことは、表も裏もすべて理解してますよ……というアナタにこそ読んでほしいのが、このQ&Aだ。
誰もがぶつかる洗濯という高い壁。一度は経験する保管という落とし穴。紆余曲折しながら長年デニムと付き合ってきたが、ここらでひとつデニムのプロが解決してみせようじゃないか。目からウロコの洗濯・保管方法に、今すぐ試してみたくなりますぞ。

「困った」を解決してくれたデニムのプロ

「ジャンティーク」代表 内田 斉さん
世界中のヴィンテージファンが聖地巡礼に訪れる、中目黒の名店ジャンティーク代表。
「ベルベルジン」ディレクター 藤原 裕さん
ヴィンテージデニムの在庫は国内随一との呼び声高い古着店、ベルベルジンの顔役。
「レミ レリーフ」デザイナー 後藤 豊さん
デニムはもちろん、あらゆる古き佳きヴィンテージ服の「経年変化」を追求し続けているレミ レリーフのデザイナー。
「ウエストオーバーオールズ」デザイナー 大貫達正さん
2017年春夏にデビューした気鋭のデニムブランド、ウエストオーバーオールズをはじめ、複数のブランドのディレクションに携わる。
「サーティーファイブサマーズ」PR 信岡 淳さん
アナトミカなどを擁するメーカー、サーティーファイブサマーズのPR。
ライター 佐藤周平さん
ファッションはもちろん、クルマ、時計、インテリアにいたるまで、ヴィテージと呼ばれるものすべてに精通する。
 

Q. インディゴの色を落とさず、汚れだけを落とせる?
A. 色が落ちないデニム専用洗剤がある。

300ml 3900円/ビヨンデックス(ベルベルジン 03-3401-4666)
デニムラバーたちにとって、理想の色落ちの獲得は永遠のテーマ。限界まで洗濯をガマンしてはき続け、いよいよとなったら水だけで洗う──各人のこだわりはそれぞれ尊重したいが、清潔感という点でのポイントダウンは否めない。
「ビヨンデックスがほかのデニム用洗剤と一線を画す点は、汚れだけがしっかり落ちること。デニムは水に浸けるだけでも色が抜けるものですが、この洗剤なら色落ちの心配は無用です」(藤原さん)
酢に漬けて色落ち防止!?
デニムを酢に漬けるとインディゴの色みが引き締まり、色落ちしにくくなるらしい。専用洗剤を表ワザとすれば、酢漬けは裏ワザか。「デニムの“酢止め”はアナトミカのディレクター、ピエール・フルニエから教わりました。聞けばフランスでは古くから知られていて、青い作業着を着る前に漬けるそう。そして日本でも刺し子の剣道着に同じ方法で色止めするとか」(信岡さん)
 

Q. 折りジワを取ってくれるおすすめの衣類スチーマーは?
A. パワフルなスチームで除菌、消臭効果も期待。

1万5000円/ティファール 0570-077-772
「僕はデニムをガシガシはきたいタイプ。特別なケアはほとんどしていないんですよ」(大貫さん)。それでも「これだけは欠かせない」というのがティファールの衣類スチーマー、「アクセススチーム プラス」である。業界No.1の強力スチームで折りジワを瞬殺。「スピーディで仕上がりもきれい。忙しいときほどありがたい。除菌や脱臭効果のほか、付着した花粉も低減してくれるとか」
 

Q. “膝抜け”を防ぐ方法は?
A. パンツハンガーで逆さに吊るす。


膝が抜けてしまったデニム。それはそれで味といえば味だが、“抜けすぎ”はいかがなものか。「接客で膝をつくことも多いので、僕のデニムの左膝は白っぽく擦れています(笑)」(内田さん)。当然膝も抜けているかと思いきや、目からウロコのワザで抜けを防止。「デニムはすべてパンツハンガーで、逆さに吊るして収納しています。たったこれだけで膝抜けは防げますよ」
 

Q. “育て中”デニムの汗の匂いが気になる。
A. 柔軟剤シートを入れて乾燥機にかける。


シートタイプの柔軟剤って聞き慣れない?でも、アメリカではわりと知られているハウスホールドだ。「僕の場合は、デニムが汗を吸ってしまったときに使います。デニムはそのまま乾燥機にかけるだけでも除菌効果が得られるそうですが、さらにこのシートを入れて回せば風合いもソフトに。そしてほんのりイイ香りがつくんですよね」(佐藤さん)。種類も豊富でネットで手軽に購入できる。自分好みの香りを探してみるのも一興だ。
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Q. デニムの保管は“裏返し”が当然?
A. アタリや変色を抑える効果がある。


「デニムが置かれている環境、つまり湿度などによる影響も大きいのですが、一度に1000本近い商品を折り畳んだ状態で納品すると、まれにデニムが黄ばむというトラブルが発生します。インディゴは空気中の水素に触れると変色を起こす場合があるんです。裏返して畳まずに吊るせば、変色はかなり防げますよ」(後藤さん)。
自社工場を運営し、膨大な量のデニム生産を請け負う後藤さんの言葉は説得力が半端ない。ならば僕らも裏返そうっと。
 

Q. 結局、デニムの正しい洗濯方法とは?
A. 正解はない。ブランドごとに流儀はある。


まずはA.P.C.に聞いてみると、4つの洗い方を推奨しているとか。4つって何? 初回ドライクリーニングの「過激主義」、浸けおきの「セミ過激主義」、脱水なしの「洗濯機」、そして「海水」だという。
海水って何? できる限り洗わずにはき続け、そのときがきたらデニムをはいたまま海に入り、乾いた砂でこする。これを何度か繰り返し、水ですすいで、太陽に当てて乾かすのが「海水」。かくもデニムの世界は深遠である。
一方、デンハムでは、一部の店舗にデニムの無料洗濯サービスがある。代官山店などの店先でデニムを洗うスタッフの姿を見かけたことがある人もいるだろう。あれは客のデニムなのだ。天候にもよるが、納期は約1週間から10日ほど。独自に開発した洗剤を用いて、客の要望を聞きながら、スタッフが丁寧に手洗いしてくれるのだ。天日干しのパリッとした仕上げが気持ちいいぞ。
「アメリカに行って洗う」から「ウールスラックスの洗い方」へ
「ヴィンテージの色落ちを考えているときに、ふと“日本とは水が違う”と思って。アメリカに行ったときに現地で洗濯していた時期もあります(笑)」(内田さん)。嗚呼、デニム洗濯道の奥深さよ。
さまざまな洗い方を試してきた内田さんの最新ウォッシュ法とは。「デッドストックの501XXを洗うときに参考にしたのが、ウールスラックスの洗い方。裏返して、色落ち具合を確認しながらの手洗いです。水は常温で洗剤も使いますが、洗濯機での脱水は避ける。すすいだらそのままバスタブに持っていって、タオルに水を吸わせます」。デリケートなウールスラックスの洗濯方法は、色落ちが読めないヴィンテージデニムにも応用できる、というわけだ。
 
鈴木泰之=写真 戸叶庸之=文

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