僕らにとって、ほかの服に比べ「特別に、身近な存在」のデニム。
服飾の歴史や潮流を縦横無尽に往来し、時代に即して咀嚼してくれるのがモードブランドだとするなら、その口当たりの良いデニムは、「身近で、特別な存在」として僕らに輝きを与えてくれる。
そんなモードのデニムで、いざ、街へ。前・後編でご案内。まずは前編。
GUCCI グッチ
あの頃の気持ちが蘇る強い“アメリカ感”
アメリカの4大スポーツのチームロゴに熱狂した、僕らのファッション黎明期。サンフランシスコ・ジャイアンツのエンブロイダリーが施された、このデニムジャケットを見ると、改めて当時のみずみずしい気持ちを思い出す。
ハードなウォッシュのデニム地と上品なスエードのコントラストに、翻って新鮮なドルマンスリーブの遊び心。経験を重ねた今だから、気負いなくさらりと着られそう。
DIOR HOMME ディオール オム
’90年代的サイズバランスでデニムスタイルに煌めきを
ワイドパンツにタイトトップス。’90年代のストリートで、僕らはサイズバランスによっても装いの印象が変えられることを知った。
ラストコレクションで同世代のクリス・ヴァン・アッシュが表現するのは、そんな時代の煌めき。明るいインディゴブルー&ワイドなワタリが、ファッションアイテムとしてのデニムの可能性も示唆している。
BERLUTI ベルルッティ
上質なだけで格好いい等身大のデニムスタイル
今や最高級紳士靴メーカーという枠を超えた、クリーンなウェアもすっかり定着。このデニムもまた、抜かりなし。
やや毛羽の立ったワンウォッシュのセルビッジデニムがもたらす高い質感には、我々も大満足。カシミヤウールのコート&ハイゲージニットという、大人の手本たる合わせがブランドのプレステージを物語る。
FENDI フェンディ
モードが咀嚼したビッグシルエットの最適解
いよいよ無視できないビッグシルエットをモノにするなら、モードの手を借りるのは得策。ボックスシルエットで程良くゆったり感を楽しめるGジャンが救世主となるはず。
横糸も縦糸同様インディゴ使いのデニムと、同色のステッチによるミニマルなルックスは、取り入れやすさ十分。スラックスで歩調を揃え、ヘイ・レイリーのアートTで花を添えたい。
DSQUARED2 ディースクエアード
てらいがないスタイルを特別に見せるブランドの粋
トラッドといえば、世代を超えた誰もが身近に感じるスタイル。ここでこそ、モードの力が冴え渡る。腰回りにゆとりを持たせたテーパードシルエットの「クールガイ」は、さすがの真骨頂。ブランドが研ぎ澄ませてきたパターニングと妥協なきラグジュアリーな素材感により、ロンドンストライプのBDシャツにキャメルのクルーネックニットという王道的な着こなしを、特別なものに変える。
長友善行=写真 梶 雄太=スタイリング HAMA=ヘアメイク