看板娘という名の愉悦 Vol.35
好きな酒を置いている。食事がことごとく美味しい。雰囲気が良くて落ち着く。行きつけの飲み屋を決める理由はさまざま。しかし、なかには店で働く「看板娘」目当てに通い詰めるパターンもある。もともと、当連載は酒を通して人を探求するドキュメンタリー。店主のセンスも色濃く反映される「看板娘」は、探求対象としてピッタリかもしれない。
新蕎麦の季節である。ここはひとつ、連れの女性に「蕎麦の実が収穫されてから1、2カ月以内に提供されるものを新蕎麦と言うんだよ」といった蘊蓄を披露しつつ、蕎麦をズルッと啜り上げたいものだ。
そんなわけで、訪れたのは東横線で渋谷から3駅の祐天寺。残念ながら連れの女性はいない。
蕎麦と日本酒の店、「星ノ灯(あかり)」。入り口には「新そば打ち始めました」の文字。
店内に入ると看板娘らしき女性が開店の準備をしていた。
席に座ってドリンクメニューを開く。
世に数多ある「セット」の中で一番好きなセットだ。味の違いを詳説する語彙は持っていないが、何となくトクした気分になる。
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