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言いたいことは臆さずに言う
松本さんがすごいのは大手企業に入っても、それに甘んじることが一切なかったという点だ。
「入社して半年ぐらいですかね、期待していたような仕事内容ではなかったので、すぐに辞めようと思ったんです。でもそんなときにちょうど新規事業の立ち上げを任されたので、じゃあもう少し居ようかなと……(笑)」。
そこから7年間、モバイルマーケティング部の部長として走りつづける日々が始まった。事業部は急速に成長を見せ、利益を拡大。会社は一部上場を目指し始め、松本さんもその業績に大いに貢献したことから若干26歳で役員登用されることになった。
その柔和な笑顔からは想像できないが、松本さんは社長と何度もぶつかった経験があるという。「言いたいことは、誰が相手でも言いますね」と苦笑する。会社が一部上場を目指したときも、松本さんは反対していた。
「大きな会社になるにつれて、さまざまな制約が増えて自分のやりたいことができなくなるので、僕は反対でした。もともとWeb制作のアルバイトから現場を経験して、営業職をやった時期もあったし、チームの立ち上げからリーダー、役員と一通り経験したので、もうやれることはやったかなという満足感はありました」。
30歳で大手IT企業を辞職し、独立
反対があったものの、一部上場企業に成長した会社。そんな大企業にいながら20代で役員にまで上り詰めた松本さんだが、30歳で会社をやめることを決断する。安定した地位と収入。そこに迷いはなかったのだろうか?
「そもそも迷ったら行動しませんね。結局、行動することに悩むぐらいなら行動しなくたっていいと思います。必然だなと自分で思うからこそ、行動するわけで」。
基本的にネガティブなことは考えないという松本さん。「自分に自信があるわけじゃない……」と言うものの、その言葉からは自身の”選択”に対する絶対的な信頼感があった。
「今の時代って、別に会社に務めているから安心とか、安定なんてこと全くない。僕には特に通うオフィスも同僚もいないですけど、自分から人に繋がるようにしていれば、何も不安はないですね」。
現在は自身の会社を立ち上げ、松本農場のオンライン事業を支えると共に、さまざまな会社のアドバイザー職も務めている。独立したことで時間の自由度は格段に増えたが、会社員時代から変わらず続けていることといえば「毎日の飲み会」だ。
「飲みの場で、人脈や仕事が広がっていくことが多いので、夜は必ず人に会う予定を入れていますね。例えば打ち合わせで表参道に行くことがあったら、表参道付近で働いている人に自分から『いま近くまで来てるんですけど、今日ご飯どうですか?』とアポをとって、積極的に会うようにしています」。
先日も、そんな人との繋がりの暖かさを感じる出来事があった。
「クラウドファンディングで松本農場のじゃがいもオーナーを募集したところ、東京の知人がたくさん支援してくれたんです」。
知り合いゼロの状態から、東京で多くの仲間を得るまでに至ったのは、ひとえに松本さんの魅力的な人柄があるからだろう。ほとんど手作業で収穫されるという松本農場のじゃがいもを全国に届け、農場としてももっと大きくする。そんな夢を松本さんは自身の力で、切り開いていた。
【取材協力】
松本農場
http://matsumoto-farm.jp/
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藤野ゆり(清談社)=取材・文


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