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2018.09.26

からだ

ロードバイクにハマった、アラフォーメタボ男の「自己満」な日常

「大人のCOMIC TRIP」を最初から読む
承認欲求という言葉がある。他者に認められ、評価されること。それを求め、すべての行動理念がそこに縛られてしまう。そんな生き方をしてきたことに覚えがある人は、決して少なくないだろう。
しかし、年齢を重ね、いつしかそれだけでは満たされなくなってきている自分に気がつく。男も40歳を間近にすると、他者からの評価だけでは満足できなくなるもの。そこで追求してしまうのが、「自己満」だ。いかに自分が気持ち良く生きられるか、自分のためになにができるのか、自己満足のために、なにをしていきたいのか……。そんな生き方を徹底的に見つめ、マンガにした作品がある。それが『じこまん ~自己漫~』(玉井雪雄/日本文芸社)だ。
『じこまん ~自己漫~』(玉井雪雄/日本文芸社)
アラフォーメタボマンガ家である玉井氏が本作のなかで追求している「自己満」、それは、ロードバイクを楽しみ尽くすということだ。
玉井氏が自転車に乗るようになったきっかけは、繰り返される日々に飽き飽きしていたから。ひたすらマンガを描き続ける毎日にうんざりし、「他者に評価される」という軸の外にあるエンターテインメントを求めていたのだ。そして行き着いたのが、自転車に乗るという行為だった。
自転車をどのようにカスタマイズするのか、なにを着て走るのか、そしてどこを目指すのか。それらはすべて自分次第。誰になにを強制させるでもなく、玉井氏は、ただひたすらに「自分自身」のために自転車道に没頭していく。
そこにあるのは、現代社会から解放され、自由に生きるひとりの男の姿。もちろん、生活を維持させるために働くことからは逃れられない(実際、玉井氏はロードバイクの実体験をこうして作品にしている)。しかしながら、生活するための軸とは別に、人生を豊かにするための軸を持っている男とは、こうも楽しく生きられるのか。本作を読んでいると、そう強く実感させられる。
何歳であっても夢中になれるものは見つけられる。いや、もしかすると、大人になってから見つけたもののほうが、人生の機微を知り尽くしている分、その魅力を何十倍も味わえるのかもしれない。玉井氏がロードバイクに熱中する姿は、まるで大人への賛歌にも映るだろう。
本作にはロードバイクに関する豆知識もふんだんに盛り込まれている。これから自転車を始めようとする人にとっては、教科書にもなりうる一冊だ。無論、玉井氏はそんなことを想定せずに描いているだろう。この作品だって、「自己満」によって生み出されたものなのだろうから。
五十嵐 大=文
1983年生まれの編集者・ライター。エンタメ系媒体でインタビューを中心に活動。『このマンガがすごい!2018』では選者も担当。



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