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たまに会える時間を大切に


とはいえ、互いの気持ちが冷めているわけではない。毎日交わすというLINEでのやりとりは、ほぼすべてのメッセージがハートマーク付きだ。また、月にたった1度のデートも、久しぶりだからこそ新鮮で特別なものに感じられる。「結婚して7年ですが、一緒にいた時間を合計したら1年に満たないかもしれない。でも、そのぶん会えるときにはなるべく楽しく過ごすようにしています」と真次さん。亜利沙さんも同じ気持ちだ。
亜利沙さん「会ったときには喧嘩をしないように。といっても、そもそも夫に対して不満が全くないので喧嘩のしようもないんですけどね。既婚の友人の話を聞くと、やっぱり夫に対していろいろと日頃の鬱憤が溜まっているみたいなんですけど、私たちの場合は一緒に住んでいないからなのか腹も立たない。無駄な争いがなくなるというのは、別居のメリットだと思います」。
真次さん「僕も不満はないですね。仮にあったとしても、一緒にいるときにあえて言わなくてもいいんじゃないかなと。デートしていたら、何に腹を立てていたかも忘れてしまいますしね」。
ただ、たまのデートだからといって特別なことはしない。買い物に行ったり映画を観たり、いたって普通に過ごすという。
真次さん「あとは、会ったときは必ず妻が料理を作ってくれて、それを食べるのが楽しみなんです。彼女は料理がとても上手で、結婚したいと思った理由のひとつでもあります。僕、もともと体重が55kgしかなくてガリガリだったんですけど、今は79kg。これは完全に妻のせいですね(笑)」。
なお、特に好きな手料理はグラタン。「別居婚を嫌とは思わないけど、妻のグラタンをたまにしか食べられないことだけはちょっと辛いですね」とのこと。
真次さんの大好物だというグラタン。ほかの料理写真も見せてもらったが、とても彩り豊かな食卓だ

 

別居婚ではなく「自立婚」

亜利沙さんはその不思議な夫婦関係について、次のように自己分析する。
「別居婚じゃなくて、『自立婚』って言い換えたらいいんじゃないかな。互いに精神的に自立しているから、同居という形にこだわらなくてもやっていけるんだと思います」。
自立婚……、なるほど的を射ている。しっかり想い合ってはいるが、しかし過度に寄りかかることなく互いに自由を謳歌している真次さんと亜利沙さん。それもまた、幸せな夫婦の形のひとつといえるかもしれない。
 
榎並紀行(やじろべえ)=取材・文


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