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モノラル再生&オートリバース非対応が醸す、感涙のトリップ体験

機能面の“追求”にもぬかりはない。筐体を見ればわかるとおり、TY-1710は21世紀の音響機器とは思えないモノラルスピーカーを搭載している。冗談ではなく、本当にステレオ再生ができないのである。さらに、驚かされるのがカセットプレイヤー部の仕様。なんと、オートリバースに対応していないため、A面からB面への切り替えは手動で行わなければならないのだ。

実際のところ、現在30代後半から40代の男性がヤングだった1980年代当時のラジカセは、オートリバースはもちろん、すでにステレオ&多機能が主流だったはず。なので、TY-1710の仕様はオッサンから見ても「古すぎ」の感は否めないのだが、ビビッドな“懐かしさ”を演出するためには、これくらい時代を巻き戻す必要があるのだろう。
余談ながら取扱説明書に、鉛筆やボールペンを使った「テープがたるんでいた場合の直しかた」が紹介されていたのには、思わず笑ってしまいました(byビートたけし)。

それだけに、“懐かしさ”ではオーシャンズ世代のオッサンたちとっても、十分以上の満足度があるはず。押し入れに眠っていたカセットテープ(神田正輝『予感』)をセットし、モノラルスピーカーから流れるお世辞にもハイファイとは言えないサウンドを聴けば、気分はマジでエイティーズ。部活帰りに寄ったカヤマ君の家で観た「夕ニャン」や、初デートで食べた「山田うどん」の味などが、鮮やかに脳裏によみがえる。このトリップ体験だけでも、TY-1710を買う価値はあるな、と思いましたね。


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