【サイダー部門3(その他の特産物)】
これぞご当地サイダー! 勇気を出して挑む価値大いにアリ
フルーツや甘味系の特産物とサイダーの相性が良いのは当たり前。やはり、思いがけない逸品とのコラボに挑戦してこそご当地サイダーというもの(?)である。これら3種を飲み比べた。
サイダー4
【エントリーNo.06/写真左】IZU CIDER~伊豆サイダー~(木村飲料):富士山をバックに伊豆の踊子がサーフィンしている、ユニークなラベルが特徴。今回エントリーしたご当地サイダーの中で唯一、食品としての特産物とコラボしていない、サイダー本来の味だけで勝負する硬派な一品だ。サイダーというよりは、懐かしい「ラムネ」を感じさせる香りがあり、炭酸も甘味も適度。間違いなく万人受けが期待できる一方、いわゆる普通のサイダーとは、どこか一線を画すような印象もある。影の実力者なのかもしれない。
【エントリーNo.07/写真中央】WASABIジンジャーエール(木村飲料):わさび漬けの老舗「田丸屋本店」とのコラボで生まれたご当地ジンジャーエール。あえてサイダーではなくジンジャーエールを選んだ理由は、一口飲めばわかる。和薬味の二大巨頭であるジンジャー(生姜)とワサビが、互いに譲らず主張しあうことで、なぜかハーブを組み合わせたカクテルのような、洋風の味わいを生み出しているのだ。テキーラやウォッカといった強めのリカーと組み合わせても美味しそう。かなり大人向け。
【エントリーNo.08/写真右】桜えびサイダー(木村飲料):駿河湾産の桜えびエキスを使用。「磯の香りと桜えびの旨味を感じられるサイダーに仕上げました」という商品惹句が、すべてを物語っている。正直、小さな子供が飲んだら泣き出しかねないレベルの奇抜さだが、それが何だというのか。ご当地サイダーにしかできない「特産物×飲料」の極北に挑む攻めの姿勢に対しては、金メダル級の評価を与えたい。もちろん、遊び心あふれるお土産としても最適。衝撃を与えること請け合いだ。
【コーラ部門】
ここでまさかの食材登場! 話のネタとしての威力は十分
ご当地サイダーのほか、静岡&伊豆には「ご当地コーラ」と呼ぶべきジャンルが存在する。最後にオマケ的な位置づけとして、以下3種を飲み比べた。
サイダー4
【エントリーNo.09/写真左】富士山頂コーラ(木村飲料):数十年以上かけて浸透し磨きぬかれた「富士山萬年水」仕込みの、富士の雪をイメージしたというホワイトコーラ。色は白いが、その味わいは、かつて駄菓子屋で売られていた、チープ系コーラのよう。味わいからイメージされる、懐かしさや親しみやすさと、富士山頂という崇高なテーマとのギャップをどのように解釈するかで、評価はわかれるところだろう。ゆえに採点も割れ、総合評価のチャートはやや地味な結果となった。
【エントリーNo.10/写真左】しずおかコーラ(木村飲料):世界有数の茶どころ静岡が、満を持して投入しただけあって、2011年、2012年と2年連続でモンドセレクション金賞を獲得。コーラと日本茶という、いわば日米におけるアイデンティティの代理戦争的なコラボは、基本コーラに勝ちを譲りつつ、後味や風味など、さりげなく要所で爪痕を残すという、実にニッポン的な勝負結果となったようだ。飲む温度によっても、印象がかなり変わりそう。茶葉の香りを楽しむなら、氷抜きの方が適しているかも。
【エントリーNo.11/写真右】うなぎコーラ(木村飲料):「食べるのではなく飲む! そんなうなぎもありでしょ?」と、いささか押しの強いコピーから、から『桜えびサイダー』にも負けない奇抜さを期待したのだが。うなぎのタレが持つ甘味との相性なのか、その味わいはちょっと甘めのコーラといったところ。正直、もっと攻め込んでほしい気持ちもあるが、インパクトのあるラベルだけでも、面白さは十分ということか。子供のためのお土産としても、結構喜ばれそうだ。
【総評】
予想以上に楽しめた試飲会。まとめて飲めば“ご当地”の魅力もアップ?
以上、静岡&伊豆のご当地サイダー(コーラ)11種を飲み比べのだが、それぞれ味わいはもちろん、商品コンセプトもかなり異なるため、単純な優劣をつけることは難しかったというのが正直なところ。全体的に見れば、フルーツや海産物、そして富士山の恵みとなる水資源など特産物の多彩さが、静岡&伊豆のご当地サイダーのユニークな特徴につながっていることがよくわかった。
そして、大きな発見となったのが、仲間と集まって開催した「試飲会」の楽しさだ。
いい年をした大人たちが、何種ものサイダーを真面目な顔で飲み比べながら評価について語り合う機会なんて、当たり前の話だが滅多にはないこと。ご当地サイダーをお酒の割り材として使えば、さらに盛り上がることだろう。
静岡&伊豆だけでなく、全国各地に多数存在するというご当地サイダーたち。家族や会社へのお土産品はもちろん、大人の男たちの“遊び”の材料としても、大いに楽しめるアイテムなのであった。
【取材協力】佐藤油店住所:熱海市銀座町6-6 電話番号:0557-81-2575www.sato-tsubaki.co.jp/小島マサヒロ・芋川健=撮影 石井敏郎=取材・文