すべては、この男のゴールから始まった。2018FIFAワールドカップ ロシア。ひところの大きな熱狂は徐々に冷め、日常を取り戻しつつある最中、その帰国中に取材の機会を得た。
代表選手の世代交代も取り沙汰される昨今、いよいよ来年、三十路を迎えるこの男は、日本サッカー界を背負う使命感を臆することなく滲ませる。その信念の源泉に迫り、見えてきたこと。
日本を背負うプロサッカー選手 香川真司スペシャルインタビュー
「数々の経験をした自分にしか伝えられないことがある」
必ずしも、順風満帆というわけではなかった。W杯直前、その身に襲いかかった3カ月もの怪我、そして突然の監督交代劇。これらによって、不動と思われた日本代表10番の座が危ぶまれたのだから。しかし、香川真司は、徳俵に足を掛けながら下馬評をうっちゃって、我々を8年ぶりの歓喜に導いてくれた。
口火を切ったのは言わずもがな、コロンビア戦。この男のPKだ。想像を超えるプレッシャーをはねのけ、大きな1点をもたらした。
「ウォーミングアップのときからPKのイメージはしていたので想定内。まさか開始3分とは思いませんでしたが(笑)。意外と冷静でした。キーパーの動きも研究済みだし、練習もした。余計なことを考えず、蹴るだけだと。自分が獲得したので、しっかり自分で決めることに意味がある。そんなストーリーを考えながら」。
ここ一番の大舞台で冷静さを保つのは、その言葉ほど簡単ではないだろう。メディアにおいて彼は結果がすべてと公言し、いかなる逆境でも常に前を向いた発言をしてきた。
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