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漫画を描いていくなかで実現したいこと

そしてもうひとつ。「コルクの社長っていうのが、僕の初代担当みたいなものですからね。彼を成功させないと、コルクのようなビジネスの後続が出てこないと思うんです」。
作家の側に立って、作家の利益を追求しながら、より良い作品を模索していくエージェントというビジネス。
「それは非常に必要だと思っています。コルクが成功しない限り同じようなビジネスをする人は出てこないでしょう。だからずーっといい話題を業界に提供し続けたい(笑)。社員増えた、広くていいオフィスに引っ越した……みたいな。このビジネスをやる人がもっともっと増えると、作家にとっても作品にとってもプラスだと思うんです。彼がうまくいってくれないと、きっと将来的に僕自身が困ることになるんですよね(笑)」。
(C)三田紀房/コルク
学費ゼロ、素晴らしい人材を輩出し続ける名門私立中高一貫校の運営が、実は生徒たちの投資によって成り立っていた……という設定で、日本人の経済観を問い、投資のイロハをレクチャーしてくれる『インベスターZ』、コルク設立以降三田さんが初めて組んで作った作品。現在、絶賛ドラマ放送中だ。
それはそうと三田さん、せっかくこうして取材に伺ったので、三田さん自身が出口さんから受け取ったみたいな、何かいいフレーズをいただけませんか? 読者である30代後半の男性に受け売りますので……。
「なるほど(笑)。結局は“どうしたいか”だと思うんですよね。40歳を目前にするなら、何かそろそろ目的をはっきりさせたほうが良いんです。別に現状からダイナミックに羽ばたく必要はない。家族と安定した平和な人生を歩むということであれば、それでもいいんです。大きなチャレンジをしたいというなら、それもまたいい。“自分がどうしたいか”ということに関して自覚的にならないといけないのが、今の時代。40歳目前っていうのは家族とはっきりきちんと話し合うべきタイミングだと思います」。
今、今後のビジョンがないことは後々大きなリスクにつながっていくということだ。
「自分が何をやりたいかをはっきりさせないまま歳を重ねていくと、結構マズイですよ(笑)。家族に何の相談もなく、突然自分の判断で会社を辞めちゃったりしかねない。別に辞めてもいいんですけど、それがあなたの独断で、家族にとっての突然になってはいけないと思います。“これからどうしたいのか”ということをはっきりさせる。目的をきちんと見据えてそれを達成するために家族で協力していく。そういう体制を作る為の時期だと思います。実際、僕の知るなかでも予測不能の行動に出る40代って多いんですよ。そんな彼らはだいたいうまくいっていません。ともかく奥様と子供たちの同意を得ること。そこさえクリアになれば、転職でも海外移住でもなんでも思ったことをすればいい。家族もきちんと協力してくれるわけですからね」。
 
【Profile】
三田紀房
1958年、岩手県北上市生まれ。明治大学政治経済学部卒業後、西武百貨店の入社。実家の洋服店の経営を経て、30歳の時に漫画家デビュー。代表作に『ドラゴン桜』『インベスターZ』『エンゼルバンク』『クロカン』『砂の栄冠』など。2005年には『ドラゴン桜』で第29回講談社漫画賞、平成17年度文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。現在、「ヤングマガジン」にて『アルキメデスの大戦』、『モーニング』にて『ドラゴン桜2』を連載中。
稲田 平=撮影 武田篤典=取材・文


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