もし、今日が人生“最後の晩餐”だとしたら、アナタは何をテーブルに運んでもらうだろうか? 最後と知らず「アレが食べられてれば……」と後悔するなんてまっぴらゴメン。食いしん坊オッサンたちよ、教えてください。「人生最後の日、どこの何が食べたいですか?」
テレビドラマ、CM、映画、舞台に活躍する大森南朋さん。今や日本を代表する役者と言っても過言ではない。
実は大森さん、役者だけではなく2014年から「月に吠える。」というバンドのギター・ボーカルとしても活動し、音源リリースやツアーといったバンド活動も本格的に行っている。というのも大森さんは、役者になるまでは売れないバンド生活を送っていた、根っからのバンドマンなのだ。
そんな彼の「
タラレバ最後の晩餐」は寿司。しかも場所は渋谷のラブホテル街の近くで、その名を「鮨○☓」。読み方を“マルバツ”というこちらは、大森さんの高校時代の友人が大将を務める店である。
待ち合わせ時間ちょうどに店に入ると、大森さんは既に大将の杉浦さんとトーク中。
「スギとは高校1年のときに同じクラスでして。それだけでなくバンドも組んでたんです。けど、スギがカナダに行くと言ってバンドを抜けて。そのあともバンドは継続したんですけど」と昔話に花が咲く。
それを懐かしそうに聞きながら、大将は寿司を握りはじめる。よく研がれた包丁でネタを丁寧に切り出し、シャリを掴む。無駄のない動きに感心し、どこで修行をしていたかを聞いて驚いた。「日本で7年、そしてロンドンでも1年。向こうに銀座・久兵衛にいた職人さんがいて、その方にも色々教わったんです。それで帰国して2011年にココをオープンしたんです」。
「ある意味、逆輸入の寿司職人とも言えるんだけど、腕は確か。いつもいい仕事するんです」と、大森さんは旧友という関係を超えて大将・スギさんの腕に惚れている。
で、「いつもの」と注文したのが「おまかせ握り10巻」(6500円※前菜付き)。
この日は中トロ、イサキ、マグロ、紫ウニ、白烏賊、ボタン海老、しんこ、のどぐろ、エボ鯛の10巻+玉子というラインナップ。
寿司は食べる順序に個性がでるものだが、大森さんは「さっぱりしたネタから」と、まずは白烏賊をパクリ。福岡産の白烏賊に塩が振ってあり、さっぱりした味わい。噛むほどに味わいが広がっていく。
続いてはボタン海老。塩とゆずの皮が乗っていて、こちらもさっぱり。それにしても、どれもひと手間かけているところがニクい、そして美味い。
「鮨マルバツ」のポリシーは、ネタは産地にこだわらない。「そういう肩書きって必ずしも味に直結するわけじゃないんですよ。だから、毎朝築地で自分が納得した魚介だけを仕入れてます」。
どのネタもとにかく美味いから、ビールも進むってもんだ。
「こんな美味い寿司を食べたら、死にたくないなぁって思っちゃいます。“最後の晩餐”なのに」と大森さん。
ちなみに“最後の晩餐”のイメージを聞いたら、「地球に巨大隕石が激突……みたいなシチュエーションで、その瞬間を仲間とワイワイやりながら待つ感じです。で、食べるなら寿司です。日本人ですし」とのこと。
そんな大森さんが最後の一貫に選んだのは玉子。「つまり、僕が人生最後に口にするのは“玉”なんです。あっ、ここの玉は穴子のすり身が入っているんです」と、ぱくり。
「美味いなぁー」と思わず感嘆の言葉がもれる大森さん。
握りを食べ終わっても旧友でもある大将・杉浦さんとの会話は止まらず、おまかせ握りについてくる前菜(これをあとから食す)で2杯めのビールを。
「以前はこの近くに事務所があったんで、よく来てたんだけど、事務所が移転してからはご無沙汰だったんです。でも、こんだけ美味くて、この値段ならまたすぐに来ます(笑)」と、次なる晩餐の約束をして、大森さんは“最後の晩餐”を〆たのでした。
鮨○☓(マルバツ)住所: 東京都渋谷区円山町1-18電話番号:03-6277-5737 営業時間:ランチ 12:00~14:00、ディナー 18:30~23:30 月曜定休 取材・文
ジョー横溝(じょーよこみぞ)●音楽から社会ネタ、落語に都市伝説まで。興味の守備範囲が幅広く、職業もラジオDJ、構成作家、物書き、インタビュアーetc.と超多彩な50歳。ラジオのレギュラー番組として「The Dave Fromm Show」(interFM897)、著書に『FREE TOKYO〜フリー(無料)で楽しむ東京ガイド100 』など多数。