あっという間に過ぎ去った2018年上半期で、37.5歳が読むべき、観るべき、聴いとくべき「本、映画、CD」を一気におさらい。楽しめカルチャー! 楽しめ夏休み!
ダンサブルで暑さも吹き飛ぶシティポップに、スリリングなNYのアングラロック。夏を盛り上げるアップ系ミュージックで最高の休日を楽しもう!
都会的なサウンドが連なる、デビュー20周年を飾る最新作
『愛をあるだけ、すべて』
今年でメジャーデビュー20周年を迎えたキリンジ。兄弟ユニットとしてデビューし、現在は兄の堀込高樹を中心にした腕利きミュージシャン集団となった彼らの新作は、バンドサウンドとエレクトロニックの要素を融合。都会的でダンサブルな曲が並ぶ。
カリスマドットコムのMCいつかのラップをフィーチャーした「AIの逃避行」では、昨年脱退したコトリンゴがゲスト参加。ウィットに富んだ歌詞や洗練された曲作りに、熟練の技が光る極上のシティポップだ。
新世代ジャズ黄金期の象徴、カマシの待望のセカンド誕生!
『ヘブン・アンド・アース』
アメリカの新世代ジャズシーンのキーパーソンによる新作は、サンダーキャット、テラス・マーティンなどシーンを代表する豪華ゲストが集結。2枚組でトータル2時間半に及ぶ大作に仕上がった。
コーラス隊を従えた壮大なサウンドと、そこから生み出されるグルーヴは圧巻で、カマシ・ワシントンのサックスは縦横無尽に吹き荒れる。超絶プレイと緻密な音作りを融合させ、ジャズのディープさとダンスミュージックとしての心地良さを兼ね備えた見事な出来栄えとなった。
NYのアングラで活躍する3人組バンドのスリリングな1枚
『ホワイ・アー・ユー・スティル・ヒア』
鬼才ジャズギタリスト、マーク・リーボウ。ルー・リードやトム・ウェイツと共演してきたマルチプレーヤー、シャザード・イズマイリー。ジャンルを超えて活躍するドラマー、チェス・スミス。彼ら、NYアンダーグラウンドシーンで暗躍する3人が結成したバンドの3作目。
パンク、ジャズ、ファンク、ラテンなど、さまざまな音楽性を詰め込みながら、尖った実験精神を発揮。超絶プレーが展開されるバンドサウンドは圧巻で、スリリングな緊張感に貫かれている。
尖りながらも聴きやすい、エジンバラの3人組による新作
『ココア・シュガー』
デビューアルバム『デッド』で、いきなりマーキュリー賞を受賞。映画『T2 トレインスポッティング』のサントラには6曲も提供するなど、イギリスで熱い注目を集めるヒップホップグループ。
3作目となる新作では、R&B、エレクトロ、ワールドミュージックなど、さまざまな要素を詰め込む実験的で自由奔放な音作りがますます進化。研ぎ澄まされたビートや、社会的なメッセージを込めた歌詞など、反骨精神に貫かれたヘビーなサウンドに圧倒される。
新しい扉を開いた、レイ・バービー13年ぶりの新作
『ティアラ・フォー・コンピューター』
伝説的なプロスケーターであり、ミュージシャンとしての顔も持つレイ・バービーが、13年ぶりの新作を完成させた。今回は得意のギターに加えてシンセサイザーに初挑戦。トミー・ゲレロやトータスのドラマー、ジョン・ハーンドンといった仲間とセッションを繰り広げる。
これまでのメロウなギターサウンドから一転して、ハーンドンの力強いドラムに表情豊かなシンセが絡む躍動感溢れる演奏へ変化。サイケデリックなムードも漂わせながら、新しい世界を切り開いた。
新生フランツによる最新は、これまで以上に踊れる1枚に
『オールウェイズ・アセンディング』
新メンバー2人が加入して、5人編成の新体制となったフランツ・フェルディナンド。4年半ぶりの新作は、フランスのエレクトロデュオ、カシアスのフィリップ・ズダールをプロデューサーに迎えて制作された。
持ち前の実験的なポップセンスにダンスミュージックの要素を融合。シンセサイザーの音色がアルバムをきらびやかに彩るなか、ヨーロッパ的ともいえる耽美なロマンティシズムも漂わせていて、再出発に相応しい新たなサウンドを生み出している。
村尾泰郎=文