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2018.08.03

あそぶ

人生に躓いたときに訪れたい、熱海の老舗ジャズ喫茶「ゆしま」


海の街<熱海編> Vol.5
男には、家でも職場でもない、サードプレイスが必要だ。それは解放的で、発見があり、人との出会いのある場所であってほしい。その候補として挙げたいのが、熱海である。地元民と観光客が交じり合い、街のダイナミズムを感じられる場所なのだ。
「海の街<熱海編>」をはじめから読む
熱海は猫が多い。干物や饅頭が並ぶ駅前の商店街の店先では、多くの看板猫がくつろいでいる。歩いていると、ボス猫のような雰囲気の太めの白茶トラを発見。この猫に導かれるようにして、小料理屋などが並ぶ裏路地へ。

そこで見つけたのが「COFFEEゆしま」という看板。入り口に「modern jazz」とあるので、東京では見かけなくなった古き良きジャズ喫茶なのだろう。

扉を開けると、とたんに全身がモダンジャズの音色に包まれる。大音量を奏でるのは天井に設置されたスピーカー。同じく天井に吊るされたウッドベースの存在感がすごい。
店の中には、いたるところに外国のものと思われる人形やワッペン、コースターが飾られている。そこに埋もれるかのように、さりげなく壁に貼られているのは、マイルス・デイヴィス、ジョン・コルトレーン、ソニー・ロリンズといったジャズ界のレジェンドたちの来日公演時の半券チケットだ。


カウンターよりほんの少し高いだけの上半身をこちらに向け、見慣れない客を出迎えてくれたのは、高齢の小さなママさん。「おすすめ」というブレンドコーヒーを注文すると、か細い指で、しかし慣れた手つきでドリップしてくれる。きっと何年も、いや何十年もこうやってコーヒーを淹れてきたのだろう。

「おいしいでしょう?」。たしかに、癖のないマイルドな味わいだが、香りはいつまでも口になかに残る。
「オープン以来、ずっと同じ銘柄のコーヒー豆を使っているんです。創業は1952年からだから……もう66年になりますね」。そう教えてくれたのは、ときおり店を手伝っている息子さんだ。


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