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宇留野を突然襲った病

そんな宇留野に転機が訪れたのは2005年1月だった。練習中、下腹部に経験したことのない激しい痛みを覚え、病院に行くと、精巣腫瘍(ガン)と診断されたのだ。あまりに突然のガン宣告だったが、病への知識がなかったため、わけもわからず、医師の言うがままに、すぐさまガンの摘出手術を受けた。
術後、医師から病状や今後の治療についての説明をされたとき、宇留野は、初めて事の重大さに気付く。手術自体は成功したが、摘出した精巣は破れており、転移の可能性が高いことを伝えられるとともに、抗がん剤治療を強く勧められた。このとき、宇留野の頭に、真っ先に浮かんだ疑問。
「サッカーは続けられるのか」。
当時のことを、宇留野は淡々とこう振り返る。

「病気に関する知識が一切なかったから、本当にわけもわからず、医師の言うがままに手術していました。手術が終わってガンの摘出手術を受けたあとは、リハビリして、すぐにチームに戻れると思っていたんです。
「でも、術後に医師から説明を受けると、転移の可能性があるから、抗がん剤治療を受けたほうが良いと言われました。しかも俺の症状の場合、治療には強い副作用が伴うとのことで、このままではサッカーを続けることはできなくなることも知りました。
ちょうどその頃は、少しサッカーに対して貪欲さをなくしていたというか、気持ちに緩みが出ていた時期だったんです。
だから、サッカーが続けられないかもしれないっていう状況に直面したら、“なんでもっと、若い頃のように真剣に取り組まなかったんだろう”っていう後悔の念が一気に押し寄せてきました」。



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