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掴みかけた夢

実は、ガンが発見される数日前、宇留野の元には、Jリーグのクラブからオファーが届いていた。Jリーガーになるという夢を目前にしながら、病を理由に辞退せざるを得なかった。
ここでさらに、抗がん剤治療を行うことになれば、それはすなわち、引退勧告を受け入れることであり、自ら描き続け、掴みかけた夢を諦めることを意味する。
転移の可能性があることは受け入れても、サッカーをやめることだけは受け入れることができないと気づいた宇留野は、自らのサッカーへの強い想いを医師に伝える。すると、いくつかの条件付きで、サッカーを続けることを許可された。
その条件とは、月2度の腫瘍マーカー検査を受けること、腫瘍マーカー検査の数値が上がり、転移の可能性が高いと見なされれば、即、抗がん剤治療に移ることだった。引退と隣り合わせの状況で、宇留野は再びサッカーの世界に戻った。
後編に続く。
 
瀬川泰祐=写真・取材・文


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