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2018.07.27

ライフ

職場の20代に「失敗が怖くてできない」と言われた


職場の20代がわからないVol.18
30代~40代のビジネスパーソンは「個を活かしつつ、組織を強くする」というマネジメント課題に直面している。ときに先輩から梯子を外され、ときに同期から出し抜かれ、ときに経営陣の方針に戸惑わされる。しかし、最も自分の力不足を感じるのは、「後輩の育成」ではないでしょうか。20代の会社の若造に「もう辞めます」「やる気がでません」「僕らの世代とは違うんで」と言われてしまったときに、あなたならどうしますか。ものわかりのいい上司になりたいのに、なれない。そんなジレンマを解消するために、人材と組織のプロフェッショナルである曽和利光氏から「40代が20代と付き合うときの心得」を教えてもらいます。
「職場の20代がわからない」を最初から読む

「挫折経験」って何?

今回のテーマは、「自信」です。我々オッサン世代の中には、「最近の20代は臆病で自信のないやつが多い」と言う人が少なからずいます。そして、そういう方の多くは、理由として「挫折経験の少なさ」を挙げます。
曰く、親に大事にされて何不自由なく育ったために、障害や失敗を乗り越えて成功した経験が少なく、自信の無さにつながっているというわけです。実際、いまだに結構な数の会社で「挫折経験のあるやつを採れ」という号令がかかっており、エントリーシートなどでも「あなたの挫折経験は?」という質問の欄が多数あり、すくすく育ってきた学生たちを困らせています。「挫折とかないんですけど……」「なんで『挫折経験』を聞くのか、意味がわからない」と途方にくれています。
 

実は弱い「挫折経験のある人」

そんな背景で、今年も会社には人事の選考をかいくぐって一定数の「挫折経験のある人」が入って来ます。しかし、さまざまな人事の方の話を聞いたり、実際の20代と話をしたりしていると、残念なことに「挫折経験のある人」は現在では特に強くもなく、自信のある人でもないようです。
むしろ、表題のように、新しい仕事に取り組ませても、失敗を恐れて最初の一歩踏み出すことができなかったり、職場や仕事になかなか適応できず五月病になってしまったり、挙げ句の果てには早期退職したりすることさえあるというのです。「挫折を乗り越えた」は「自信」につながるのではないのでしょうか。それとも、今の世の中では通用しないのでしょうか。
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昔は確かに強かった

その理由は、昔と今とでは仕事の特徴や質が変わってしまったので、必要な自信の種類が変わったからではないかと私は思います。昔の戦後から高度経済成長を経てバブル期ぐらいまでの日本は、欧米など目指すべきものがありました。自分達で考えなくても、どうすれば勝てるのか、勝ちパターンがわかっていました。
だから、仕事で成果をあげるために必要なことは創造性というよりは、努力と根性です。行くべき方向、なすべき方法は決まっているのですから、あとはそれを他人よりもどれだけたくさん、早く、ちゃんとできるかが勝負です。こんなとき、挫折経験を経ている人は強い。あの挫折をもう二度と味わいたくないと、負けてなるものかと頑張れます。
 

負けることができない「挫折経験者」

ところが、今はもう勝ちパターンがわかりきっているというような仕事は多くありません。試行錯誤を繰り返して勝ちパターンを見つけることから始まる仕事が増えています。こういう仕事において、挫折経験からくる「勝ちたい」人が昔のように勝てるのかというとそうはいきません。
彼らは負けたくないから、承認欲求を満たしたいから頑張るわけですが、勝ちパターンが決まっていない仕事では、何度も負け続けなくてはなりません。そうしているうちに、負け続けることに耐えられなくなって、「失敗が怖い」「もうやりたくない」となるのです。せっかく「あの挫折」から抜け出したのに、もう情けない境遇に自分の身を置きたくないということです。このように、今は必ずしも「挫折経験のある人が強い」とは言えません。
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