熱海に伝わる家庭の味「イカメンチ」で遅めのランチ

資料作成を終えて時計を見ると、もう午後2時近くになっていた。遅いランチになるけれど、熱海ならではのグルメを愉しむとしよう。軽く肩や首のストレッチをし、コワーキングスペースをあとにする。
向かったのは“イカメンチ”の名店「味里」。暖簾をくぐると、大将が大きな声で迎えてくれる。

イカメンチは昔から熱海に伝わる家庭の味だ。地元で水揚げされたイカを刻み、野菜や調味料を加えてつみれにし、油で揚げる。素朴な料理だが、その味わいは想像以上にジューシーでご飯が進むのだ。

「ソースやマヨネーズをつけてアレンジしてもおいしいですよ」と大将。そんな食べ方もできるB級グルメ感がたまらない。店内には松岡修造や梅宮辰夫の写真が飾られている。イカメンチは“くいしん坊”も認める郷土料理なのだ。

 

熱海ビールを飲みながら地元の人たちと語らう夕べ

仕事の準備は万端だし、地元のグルメも堪能した。明日のプレゼンを成功させるために、もう少しここで英気を養うとしよう。気持ちのいい風が通り抜ける商店街を歩き、バー＆ゲストハウスの「MARUYA（マルヤ）」へと向かう。

熱海ビールをオーダーし、つまみはグリルでじっくりと焼いたサバの干物。地元で水揚げされたサバは脂がよく乗り、箸を入れるとほろほろとほぐれる。熱海ビールは富士箱根の天然水で造られたクリアな味わいの地ビールで、熱海芸者のラベルが目印だ。明日、仕事のあとにチームのみんなで乾杯するためにお土産に買って帰ろうかな。

そんなことを考えながら夕日を見ていたら、地元の人が「どこから来たの？」と陽気に声をかけてきた。サバをシェアして会話を楽しんでいると、店を訪れる客が次々と会話に参加してくる。おかげでリラックスすることができた。


名残惜しさを感じつつ、熱海駅に戻り新幹線に乗る。オンとオフのメリハリがついたいい1日だったな、と車中で思う。
オフィスでも自宅でもない、ちょっと遠征した場所でのリモートワーク。たまにはこんな仕事のやり方があってもいい。
藤野ゆり（清談社）＝取材・文