OCEANS

SHARE

第1志望合格でも、失ったものがある

Cさんの息子は某有名私大付属校を目指していたが、成績は振るわず、偏差値にして10〜15足りないところをうろうろしていた。
小6になっても模試での成績は上がらない。そんなとき、リビングでテレビを見てくつろぐ息子を見て、つい言ってしまった。「なんで勉強しない? こんな成績じゃ到底合格できない。本当にお金の無駄だ。父さんが一生懸命稼いだお金をドブに捨てるようなものだ。受験なんてやめちまえ!」。NGワード三連発。
息子は土下座せんばかりの勢いでどうしても受けさせてほしいと懇願。そこからは血相を変えて勉強するようになった。そして、大逆転で見事第1志望合格を果たした。
それだけを聞けば、「なんだ成功談じゃん」と思うかもしれない。しかしCさんはあの発言を、息子が大学生になったいまでも後悔している。
「子供が子供なりに頑張っているのに、お金がもったいないなどと言ってしまった。絶対にダメですよ。それだけでなく、息子には多分に高圧的に、私の価値観を押しつけてしまった。それで私の顔色をうかがったり、物事を自分で考え抜こうとしなかったりという姿勢が身に付いてしまったのではないかと感じています。親の価値観や想像の範囲の中で子供を成長させようと思うべきではなかったと、いまでも反省しています」。
「第1志望合格」という結果ですべてが帳消しになるわけではないのである。
おおたとしまさ
「子供が“パパ〜!”っていつでも抱きついてくれる期間なんてほんの数年。今、子供と一緒にいられなかったら一生後悔する」と株式会社リクルートを脱サラ。中学受験を親子にとっていい経験にする方法、子育て夫婦のパートナーシップ、男性の育児・教育、無駄に叱らない子育てなどについて、執筆・講演を行う傍ら、新聞・雑誌へのコメント掲載、メディア出演にも対応している。著書は 『ルポ塾歴社会』、『追いつめる親』、『名門校とは何か?』など50冊以上。近著は『開成・灘・麻布・東大寺・武蔵は転ばせて伸ばす』 (祥伝社新書)



SHARE

次の記事を読み込んでいます。