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看板娘のみおさん(29歳)にオススメを聞くと、山形の銘酒「十四代 吟撰」を持ってきてくれた。一杯980円。
「私、日本酒大好きなんですよ」
「好きすぎて利き酒師の資格も取ったんですよ」
今日もいい夜になりそうだ。
彼女は熊本県阿蘇郡出身で、すぐ近くにある武蔵野音大の声楽学科の卒業生。
「このお店は2年前にオープンしたんですが、その1カ月後から働いています。理由ですか? 家が超近かったから」
ところで、声楽専攻の女性は、やはりふだんもクラシックなどを聴くのだろうか。
「いえ、普通のロックですね。Official髭男dismっていうバンドが好きです」
寡聞にして存じません……。みおさん、それ”普通のロック”じゃないのでは?
フードメニューも美味しそうで目移りする。
悩んだ末に「お造り全種盛り」(980円)を注文した。やがて、運ばれてきた。そして、大層驚いた。
これで1000円以下とは。
しかも、それぞれの上には、にんにく醤油、胡麻だれ、雲丹醤油、薬味まみれという名バイプレイヤーたちが乗っている。
トイレの壁にはオープン時のレポート記事が載っている『日本外食新聞』が貼ってあった。
なるほど、いろいろ発見があった。
・ユニークな店名はオーナーである加藤亮さんの「亮」の字を分解したもの
・店舗デザインは上間理央さんらが主宰するネジアーキテクツ
・コンセプトは、器、空間、居心地の良さにこだわった「品のある大衆酒場」
理央さん、高円寺の飲み仲間だ。グッジョブ。
ちなみに、みおさんが看板娘たるゆえんは方々から声がかかること。店内を忙しく飛び回りながら、あちこちで常連と談笑している。皆さんに彼女の魅力について聞いてみた。
「日本酒に関する知識が豊富で尊敬する」
「全体に目を配っていてお酒が空いたらすぐに来てくれる」
「とにかく、いつも明るいのがすごいと思う」
しかし、みおさん曰く「すごい人見知りで、ここ以外ではあんまり話しません」。
常連の「みんなで一杯飲みなよ」という一言で、店長のシオさん(34歳)とアルバイトのユウヤくん(21歳)も参集。
シオさんは一瞬たりとも真面目な顔をしない。
彼のエプロンには「MY DOCTOR SAYS I NEED SHOTS(医者が俺には酒が必要だと言っている)」の文字。これ、ほしいな。
常連さんのラスベガス土産とのこと。
さて、みおさん。お代わりは何がいいですかね。


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