マウイ島には世界中から海に魅せられた人たちがいつも集っている。新しい遊びへの開拓精神旺盛なマウイの人々、その中核となるアスリート、インダストリーを支える人々にマウイの魅力を聞いてみた。
ウインドサーファー/ゴーフォイルプロデューサー
Alex Aguera(アレックス・アグエラ)
「SUPで乗れるフォイルが欲しい」 カイ・レニーにそう言われたんだ
1982年にフロリダから風と波を求めてウインドサーフィンの選手としてマウイに移住してきたアレックス・アグエラ。
選手をリタイアしたあとは、カイトサーフィンボードの開発やカイト用のハイドロフォイルの製作を手掛けるブランド、ゴーフォイルをプロデュース。もともとひとつのことをコツコツとやり続ける職人気質な彼が作り上げるフォイルはマニアのなかで浸透していった。
その性能の良さが口コミで広がると、既にトップウォーターマンとして地位を築いていたカイ・レニーから「動力に頼らず波に乗れるフォイルを作れないか」という相談を受けた。それが彼の人生だけでなく海の遊び方を根底から変えることになる。
カイトサーフィンのフォイルを作り続けてきた経験が活かされ、遅いスピードでリフトするプロトタイプを持って沖に出てテイクオフすると、突然リフトしたと同時にボードがひっくり返りとても危険だとわかった。
すぐにまた改良をして翌日テストをしてみると問題なくリフトした。それからいくつかの改良を加えたボードとフォイルでライディングしたカイ・レニーの映像はたった1週間で500万回の再生を記録し、それがフォイルフィーバーの始まりとなったのだ。
それからの広がりはマウイだけでなく、世界中のサーファーがポストしている映像を見ればわかるだろう。
「楽しんでいる人たちの素晴らしいバイブレーションがどんどん広がって海での遊び方が変わってきてるよね。混雑した海に嫌気がさして人のいない波の悪い場所でフォイルサーフを楽しむビッグネームサーファーが増えてきているのは本当にうれしい」。
最後に、アレックスにとってマウイとは? と、質問をしてみた。「そんなのはホームに決まっているだろう?」と普段あまり表情を変えない彼が少し表情を和らげて答えた。
「ホーム」という言葉に、マウイの魅力のすべてが凝縮されているような気がした。
Thomas Servais=写真 岡崎友子=コーディネイト 阿出川 潤=編集・文