子育てと家事は夫6:妻4、月イチで家庭内ミーティングを実施
「子供と過ごす時間」を増やすために転職する。そう言うと、簡単な選択に聞こえるかもしれないが、かなり大きな決断だ。
なぜこの生き方を選ぶことができたのだろうか。その理由を勝間さんはこんなふうに説明する。
「僕は妻がビジネスパーソンとして優秀だと思っていて、もっとやりたいことがあるなら、思いっきり自由に仕事してほしかった。一方、僕はすでに何度も転職しています。新卒で入社してキャリアを積み重ねた人なら、簡単にそのキャリアを捨てられないと思いますが、僕の場合はそうではなかった。その点も大きいと思います」。
もちろん、勝間さんも仕事では自分の担当先に責任を持ち、きちんと成果を上げている。ただ、小さい子供は体調を崩しやすく、保育園の送り迎えなどもある。
自分たち家族にとって何がベストで、子供にストレスを与えないためにはどうすればいいか?
考え抜いた結果、主夫という選択肢があることに気づいた。前述したように、主夫とは誰かにやらされるのではなく、「主体的に子育て・家事を行う夫」という意味だ。
なによりも、子供と過ごす時間が増えたことで、仕事では得られない「子育ての楽しさ」にもあらためて気づかされたという。
「子供と多くの時間を過ごしていると、毎日の成長を見られるんです。寝返りするのさえ大変だったのに、2本足で立って、走って、いまやリズムに合わせて踊ったりする。子供たちが成長する姿を間近で見ることによって、自分もスキルアップしよう、勉強しようという意欲が生まれ、『成長したい!』と思えるんです」。
そして、笑うことが増えた。子供は一挙手一投足がかわいいので、自然と勝間さんも笑顔になるのだ。
「職場では、こんなふうにいつもニコニコして笑顔でいることって少ない気がします」。
その後、第2子の妊娠・出産を機に、勝間さんが保育園の送り迎えや夕食も作るようになった。家事・育児の夫婦の分担は6:4。勝間さんが6で妻が4だ。今にいたる主夫業の開始である。
現在は、月1回ほどのペースで勝間さんと妻による家庭内ミーティングを行い、子育てや家事の分担を調整しているという。まるでドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)に出てきたみくりと平匡の家族会議のようだ。
主夫という選択の一番の障壁は日本社会全体の「理解の低さ」
ただし、主夫に対する偏見は根強い。ダイバーシティが注目を集める反面、日本社会には「夫は外で働き、妻が家を守る」という固定観念があり、なかなか主夫への理解が得られないのが現実だ。
「生きづらさは感じますね。『主夫』という概念が浸透していないので、『主夫やっています』と言ったら、相手は『主婦』をイメージしてしまう。だから、あまり外ではこの言葉を使いません。会社も同じで、『子育てしているので早く帰ります』とは言いづらい雰囲気があります」。
こうした社会の理解の低さに加え、もうひとつ主夫の障壁となるのが、子供が大きくなった後の社会復帰だ。
子育ての期間は有限で、15歳ぐらいになればもう親の世話はいらない。家事・育児を優先して50歳前後の年齢になってしまうと、働き口の選択肢が限定的になる。
「正直、会社を辞めてもいいかなと思ったことがあったんです。でも、なんらかのスキルを持たないと、子育てが一段落した後の選択肢が有期雇用しかなくなります。それも悩みのひとつですね。だから今、後々困らないように、コンサルタント養成講座を受講するなどして、自分の未来に投資しています」。
楽しんで子育てするだけではなく、子供たちが大きくなった後の自分のライフステージを見つめることも、主夫という生き方では大切な要素となるわけだ。
勝間さんの妻は現在、第3子を妊娠中だ。半年後には家族がもうひとり増え、さらに楽しい日々が始まる。
男性は仕事が人生の中心になりがちだが、「こういう選択肢があることも知ってほしい」と勝間さん。テーマは生き方の自由度を広げること。勝間さんのチャレンジは、これからも続いていく。
取材・文=押尾ダン(清談社)