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たまに会うからこそ、常にフレッシュな気持ちでいられる


春菜さんは、洋さんとの共同生活を拒んでいるわけではない。ただ、一緒にいることより、今やるべき研究に没頭する道を選んだ。夫とは心でつながっている。自信があるからこそ、ステレオタイプな夫婦像に縛られる必要はない。幸い、夫もそんな妻を応援し、成功を望んでいる。
洋さん「自分で言うのもなんですが、妻は優秀なんですよ、本当に。大学も首席でしたし、研究者として世の中に貢献できる人だと思うんです。僕のために料理を作ったり家事をしたり、そういうことに時間を費やすより研究者として羽ばたいてほしい。最終的にはノーベル賞をとってほしい、なんて思ってます(笑)」。
そんな夫に、妻も素直な感謝を述べる。「今の生活に不満は全くありません。離れているので常に安否確認はしていますが、基本的には互いに放置です。かなり自由にやらせてもらっていますね」。
平日のコミュニケーションはLINEで、毎日たわいもないやりとりする程度。休日は日本時間の22時からビデオチャットで会話をするが、絶対の決まりではない。飲み会などの予定があればキャンセルできるゆるいルールだ。
洋さん「自分の時間を好きに使えるのは、僕にとってもありがたい。休日はイラストを描いたり、LINEのスタンプを作ったり、友人とゲーム実況の動画を撮ったりしています。料理も好きですし、ひとりでできる趣味ばかりですね。最近はドローンも買いました。妻は妻でランニングや乗馬をやりますし、別居婚だからこそ互いに個人の時間を思う存分楽しめる。そう、前向きにとらえています」。
必要以上に干渉せず、頼りすぎず、しかし確かに思い合っている。そういうふたりだからこそ成り立つ遠距離婚。こんなメリットもあるようだ。
洋さん「たまに会うと、やっぱり新鮮で恋心が燃え上がるんですよね(笑)。付き合い始めてから数えると14年になりますけど、未だにフレッシュな気持ちでデートできる。別れ際には『次は半年後だね』って空港で涙ぐむくらい、互いの大切さを実感するんですよ。別居状態が、かえって夫婦円満の秘訣になっていると思います」。
2016年冬、スイスにて。ふたりは年2回ほど会い、旅行を兼ねることもある。この写真はヨーロッパ旅行をしたときの様子。背景に見えるのはイタリアとの国境に聳える、標高4478mのマッターホルン。


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