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そこで、この幼稚園の経営者は、教員に徹底して承認と感謝を伝えるようにした。「あなたのやっていることは正しいのだから自信を持って仕事をしなさい」と認め、「厳しい環境のなかでよくやってくれて感謝します」と労(ねぎら)いの言葉をかけ続けたのである。
すると効果はてきめんに表れ、辞めていく教員がゼロになったという。
経営トップからの承認は、それだけ大きな自信と安心感をもたらすわけである。
ただ、上司や先輩は必ずしも自分が直接認めてやらなくてもよい。上司や先輩から認められるより、お客さんや取引先など外部の人から認められたほうが大きな自信につながる場合がある。
某生協に採用された新人の女性職員は、なかなか仕事に自信が持てず、しばしば泣きながら「仕事を辞めたい」と上司に伝えていた。そんなある日、彼女はいつもどおり商品を組合員の家へ配達に行った。そのとき配達先の女性から、「いつも配達してくれているお礼に」といって、一輪の花を手渡された。
その花を持ち帰ってきた女性職員に対して上司は、「なぜ、その花をいただいたかわかるか?」と問いかけた。
すると彼女は、自分の仕事が認められたことだと理解し、一瞬にして表情が変わった。それ以来、彼女は別人のように自信にあふれる態度で仕事をするようになり、一度も「辞めたい」とは口に出さなくなったそうだ。

「承認」がもたらすさまざまな効果

人はだれでも自分にどれだけの力があるか、自分がどれだけ貢献できているかを知ることが難しく、また周囲に受け入れられているかどうかもわからないものだ。
まして新入社員の場合、経験がなく未熟なうえに、それまでの環境や人間関係から切り離され、不安でいっぱいである。そのため、ちょっとほめられたり認められたりしただけでも安心でき、自信にもつながる。
だからこそ、周囲からの承認が大切なわけである。
承認にはいろいろな方法がある。最も一般的な方法は、相手のよいところや努力しているところなどを具体的にほめることだ。ただ、いきなりほめるのは難しい。そこで、まず相手が一歩を踏み出し、行動するように背中を押してやるとよい。
行動すれば結果が出るし、たとえ期待したような結果が出なくても挑戦したことをほめてやればよいのである。


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