「不動産の噂の真相」を最初から読む不動産の噂の真相Vol.16
オーシャンズ世代にとって“避けては通れない未来”のひとつに、「住まいをどうするのか」というテーマがある。結婚し、子どもが生まれ、やがて巣立っていく――そんな人生の物語をつむぐ舞台=住まいについて、実は私たちはそこまで深い知識を持っていない。なんとなく周りの意見やメディアの見出しやウワサ話に踊らされてはいないだろうか。この連載では、元SUUMO新築マンション編集長が、世の中に出回っている“不動産のウワサ”について徹底検証。信じるも信じないも、あなた次第です。
住宅ローンの金利優遇は、1990年代後半から始まった
オーシャンズ世代にとって、住宅ローンの金利の相場観は何%程度だろうか。ここ2~3年内に住宅購入を初めて検討した人なら、住宅ローンが金利1%以下で借りられるのは当たり前と思っているかもしれない。しかし、筆者のように住宅ローンの金利水準を長くウォッチしてきた人間にとっては、現在の金利水準は歴史的に見て異例のバーゲンセール状態に見える。
住宅ローンの金利優遇の歴史を遡ってみると、1990年代後半に当初3年間だけ金利を1%に優遇する、といった形で一部の銀行が始めたと記憶している。当時、住宅ローンの最大シェアを占めていた住宅金融公庫の公的融資の金利水準が3%台だったこともあり、当初3年間だけとはいえ1%のお得感は絶大で、大ヒット商品となった。
折しも日本経済がデフレに突入し、企業の資金需要が縮小するなか、多くの銀行が個人向け商品の住宅ローンの貸し出し拡大に乗り出した頃だ。小泉政権によって住宅金融公庫の個人への直接融資が廃止されたことも手伝い、以降、銀行間の住宅ローン顧客獲得競争が過熱し、金利優遇の幅や期間が拡大し続け、現在に至るわけだ。
余談になるが、金利優遇商品がスタートした当初は、期間限定の金利優遇キャンペーンという体裁だった。しかし実態は、期限がくるたび期限を延長して金利優遇が常態化していたため、「優遇」や「キャンペーン」という誘因ワードは不適切という業界指導が入り、以降は「金利引き下げ」と言うようになった。
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