0.1%の金利差でも年間数万円の差。粘り強い交渉で「最優遇」を勝ち取れ
本題に戻ろう。言葉が「優遇」であれ「引き下げ」であれ、一般に住宅ローンの低金利商品は、市場の金利水準を反映した「基準金利」から、銀行ごとに金利を割引して貸し出している。一般の商品で言えば定価に相当する基準金利から、金利を割り引く優遇金利の手法は、まさにバーゲンセール的なのだ。
そして一般にはあまり知られていないが、優遇金利には数種類ある。具体的には、金融機関の店頭やホームページなどで告知されている優遇金利とは別に、自行と提携する企業の従業員や、取引実績などから上得意様に位置付けられる顧客などを対象に、オープンな優遇金利よりさらに金利を割り引いてローンを提供することがあるのだ。そして、銀行としてはこれ以上金利を下げられない限界ラインを「最優遇金利」という。逆に、信用力が低い人向けに一般の優遇金利より少し高めの金利を設定した優遇商品を用意しているケースもあり、これもあまりオープンにされていないことが多い。
住宅ローンを借りる側にとっては、「最優遇金利」で借りられればいいが、個人の信用力だけでは審査はそう甘くない。筆者は会社員だった数年前に、当時20年近く給与振り込みや公共料金の引き落とし口座にしてきた銀行から、「最優遇金利」での借り換えをあっさり断られたことがある。残高不足で引き落としが滞る等の信用力を下げる事態を招いたことは一度もなかったし、年収も同世代では少なくないはずだったが、「クレジットカードを作っていただければ……」的な追加条件を提示されることもなく、門前払い状態だった。
一方で、同時並行で検討していた勤務先の福利厚生メニューにあった提携銀行の住宅ローンでは、指定された銀行の法人対応窓口に申し込んだら、一般の優遇金利より0.1%低い金利で問題なく借り換えることができた。それが「最優遇」であったかどうかはわからないが、一般の優遇金利より低く貸してもらえたことは事実だ。
住宅ローンの貸し出し方針は銀行ごとに違い、時代によっても変化するため、筆者のようなパターンがいつどの銀行でも通用するかは不明だ。だが、一般にオープンになっている優遇金利よりさらに低金利で借りられる可能性があることだけは間違いない。情報がオープンになっていない以上、こうすればOKというような定型のアドバイスは難しいが、少しでも有利に借りられるなら追求してみる価値はあるというものだ。
「最優遇金利」で借りるための絶対的なノウハウはないが、ひとつ言えることは、断られてもあきらめない粘りが大切ということだ。確かに手間はかかるが、それも一時のこと。数千万円単位の借り入れではわずか0.1%でも年間数万円の違いになる。自身の交渉力だけでなく、勤務先の信用力など使えるものは何でも使って、どん欲に「最優遇金利」を勝ち取ってほしい。
取材・文/山下伸介
1990年、株式会社リクルート入社。2005年より週刊誌「SUUMO新築マンション」の編集長を10年半務め、のべ2700冊の発刊に携わる。㈶住宅金融普及協会の住宅ローンアドバイザー運営委員も務めた(2005年~2014年)。2016年に独立し、住宅関連テーマの編集企画や執筆、セミナー講師などで活動中。