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“不動産の買い時”を見定めるために、注目すべき指標とは?

株価の上昇も金融緩和がもたらした成果のひとつだ。アベノミクス以前は1万円を割っていた日経平均株価が2万4000円超と3倍近くになった。株式投資で資産が膨らんだ人は少なくないだろうし、株式の利益が不動産投資にも向かっているという話もよく耳にする。
また、株式投資をしていない人にとっても株高にはメリットがある。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は平成13年から年金積立金の市場運用を始めており、その累積運用益はアベノミクス以前の約14兆円(平成23年度)から平成29年末時点で約69兆円と、約5倍に急拡大している。将来に年金がもらえるか不安に思っている人は少なくないだろうが、実は年金財政は大幅に改善しており、この事実は多くの年金加入者にとって間違いなくメリットだ。
このように生活者目線でもさまざまなメリットをもたらした黒田日銀の金融緩和政策だが、一方でこの政策がマイナスに働いているのが金融機関だ。端的に言えば、超低金利でローンを借りる人が得するなら、逆に貸す側である金融機関は損をするわけだ。昨秋以降、大手銀行グループが相次いで大幅な人員削減計画を発表したのも、金融緩和の長期化によって経営環境が悪化していることと無関係ではないだろう。金融機関に勤める人にとっては、金融緩和政策の継続は必ずしもありがたい話ではないかもしれない。
好景気が続くアメリカではすでに利上げ(金融引き締め)に転じており、日本でも金融緩和の出口を急かす声が一部にはある。ただ、日本の金融緩和はアメリカより数年遅れてスタートしたため、出口は時期尚早という見方も多く、少なくとも、今回の日銀総裁人事は金融緩和政策を継続するという政府の意思を明確にしたものと言っていいだろう。
最後に経済のある著名専門家から聞いた話だが、金融緩和によって投資資金が潤沢になると、真っ先に反応するのが株価で、不動産は株式に比べて流動性が低い分、半年~1年ほど遅れて反応するそうだ。つまり、株価は不動産価格の先行指標と見ることができるわけだ。2月初旬には、米株式市場の影響で日本株が急落する場面があったが、不動産購入を考えるならば、株価の短期的な変動より中長期的なトレンドに着目すべきだろう。筆者の見立てでは、超低金利の継続が見込めて資産価値が維持されやすい状態は、基本的に不動産購入にとって追い風と言えるのではないか。
取材・文/山下伸介
1990年、株式会社リクルート入社。2005年より週刊誌「SUUMO新築マンション」の編集長を10年半務め、のべ2700冊の発刊に携わる。㈶住宅金融普及協会の住宅ローンアドバイザー運営委員も務めた(2005年~2014年)。2016年に独立し、住宅関連テーマの編集企画や執筆、セミナー講師などで活動中。
 
 
 
 
 


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