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2018.03.18

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「黒田バズーカ継続」がもたらす、不動産にまつわるメリット・デメリット


「不動産の噂の真相」を最初から読む
不動産の噂の真相Vol.15
オーシャンズ世代にとって“避けては通れない未来”のひとつに、「住まいをどうするのか」というテーマがある。結婚し、子どもが生まれ、やがて巣立っていく――そんな人生の物語をつむぐ舞台=住まいについて、実は私たちはそこまで深い知識を持っていない。なんとなく周りの意見やメディアの見出しやウワサ話に踊らされてはいないだろうか。この連載では、元SUUMO新築マンション編集長が、世の中に出回っている“不動産のウワサ”について徹底検証。信じるも信じないも、あなた次第です。

住宅ローン金利は史上最低水準。当面は”底”の状態が維持されるはず

2月に政府から次期日銀総裁人事案が国会に提出され、黒田総裁の続投が事実上決定した。日銀総裁の任期は5年で、2期連続というのは54年ぶりとのことだ。日銀総裁に誰がなるかなんて、われわれ一般国民には遠い話に聞こえるかもしれないが、実はそんなことはない。日銀がどんな金融政策をとるかによって、住宅ローンの金利や不動産価格、株価が大きな影響を受ける。その政策の方向性を左右する日銀総裁人事は、マイホームを購入したり、株式やその他の金融商品などに投資をしたりする人にとって、注視すべきニュースなのだ。
では、黒田総裁の再任は、どんなメリット、デメリットがあるのだろうか。ここでは主に不動産に関わる点について考察してみたい。報道などでよく語られているのが、現在の金融緩和路線の継続である。実際に黒田総裁は、再任されれば引き続き強力な金融緩和を継続する旨のコメントを出しているから、これは間違いないところだろう。
アベノミクスの目玉政策である日銀の異次元金融緩和、通称「黒田バズーカ」が、住宅ローンの超低金利化をもたらしたのはご存知の通り。マイナス金利や長短金利操作などの政策によって、現在の住宅ローン金利は史上最低水準にある。そして日銀は金利を現水準に維持するよう操作しているため、金利がさらに下がる可能性は低く、現在の金利はまさに”底”といえる状況にある。現行政策が継続すれば、当面は”底”金利の住宅ローンを使えるうえに、「金利が低いうちに」と慌てることなく購入を検討できることも大きなメリットだろう。
また、金融緩和によって金融機関の日銀当座残高が増えて、それが融資圧力となって世の中に出回るお金の総量(マネーストック)が増えると、だぶついた資金が不動産に向って、不動産価格は上昇しやすくなる。実際、近年のマンション価格高騰が始まったのは2013年であり、異次元金融緩和政策がスタートした時期と重なっている。不動産価格の上昇はこれから買う人にとってはデメリットに思えるが、不動産を所有してしまえば資産価値が維持されやすい状況とも言える。いくら安く買えても購入後に資産価値が下がりやすい状況よりは、有利と言えるだろう。
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“不動産の買い時”を見定めるために、注目すべき指標とは?

株価の上昇も金融緩和がもたらした成果のひとつだ。アベノミクス以前は1万円を割っていた日経平均株価が2万4000円超と3倍近くになった。株式投資で資産が膨らんだ人は少なくないだろうし、株式の利益が不動産投資にも向かっているという話もよく耳にする。
また、株式投資をしていない人にとっても株高にはメリットがある。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は平成13年から年金積立金の市場運用を始めており、その累積運用益はアベノミクス以前の約14兆円(平成23年度)から平成29年末時点で約69兆円と、約5倍に急拡大している。将来に年金がもらえるか不安に思っている人は少なくないだろうが、実は年金財政は大幅に改善しており、この事実は多くの年金加入者にとって間違いなくメリットだ。
このように生活者目線でもさまざまなメリットをもたらした黒田日銀の金融緩和政策だが、一方でこの政策がマイナスに働いているのが金融機関だ。端的に言えば、超低金利でローンを借りる人が得するなら、逆に貸す側である金融機関は損をするわけだ。昨秋以降、大手銀行グループが相次いで大幅な人員削減計画を発表したのも、金融緩和の長期化によって経営環境が悪化していることと無関係ではないだろう。金融機関に勤める人にとっては、金融緩和政策の継続は必ずしもありがたい話ではないかもしれない。
好景気が続くアメリカではすでに利上げ(金融引き締め)に転じており、日本でも金融緩和の出口を急かす声が一部にはある。ただ、日本の金融緩和はアメリカより数年遅れてスタートしたため、出口は時期尚早という見方も多く、少なくとも、今回の日銀総裁人事は金融緩和政策を継続するという政府の意思を明確にしたものと言っていいだろう。
最後に経済のある著名専門家から聞いた話だが、金融緩和によって投資資金が潤沢になると、真っ先に反応するのが株価で、不動産は株式に比べて流動性が低い分、半年~1年ほど遅れて反応するそうだ。つまり、株価は不動産価格の先行指標と見ることができるわけだ。2月初旬には、米株式市場の影響で日本株が急落する場面があったが、不動産購入を考えるならば、株価の短期的な変動より中長期的なトレンドに着目すべきだろう。筆者の見立てでは、超低金利の継続が見込めて資産価値が維持されやすい状態は、基本的に不動産購入にとって追い風と言えるのではないか。
取材・文/山下伸介
1990年、株式会社リクルート入社。2005年より週刊誌「SUUMO新築マンション」の編集長を10年半務め、のべ2700冊の発刊に携わる。㈶住宅金融普及協会の住宅ローンアドバイザー運営委員も務めた(2005年~2014年)。2016年に独立し、住宅関連テーマの編集企画や執筆、セミナー講師などで活動中。
 
 
 
 
 

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