「不動産の噂の真相」を最初から読む不動産の噂の真相Vol.15
オーシャンズ世代にとって“避けては通れない未来”のひとつに、「住まいをどうするのか」というテーマがある。結婚し、子どもが生まれ、やがて巣立っていく――そんな人生の物語をつむぐ舞台=住まいについて、実は私たちはそこまで深い知識を持っていない。なんとなく周りの意見やメディアの見出しやウワサ話に踊らされてはいないだろうか。この連載では、元SUUMO新築マンション編集長が、世の中に出回っている“不動産のウワサ”について徹底検証。信じるも信じないも、あなた次第です。
住宅ローン金利は史上最低水準。当面は”底”の状態が維持されるはず
2月に政府から次期日銀総裁人事案が国会に提出され、黒田総裁の続投が事実上決定した。日銀総裁の任期は5年で、2期連続というのは54年ぶりとのことだ。日銀総裁に誰がなるかなんて、われわれ一般国民には遠い話に聞こえるかもしれないが、実はそんなことはない。日銀がどんな金融政策をとるかによって、住宅ローンの金利や不動産価格、株価が大きな影響を受ける。その政策の方向性を左右する日銀総裁人事は、マイホームを購入したり、株式やその他の金融商品などに投資をしたりする人にとって、注視すべきニュースなのだ。
では、黒田総裁の再任は、どんなメリット、デメリットがあるのだろうか。ここでは主に不動産に関わる点について考察してみたい。報道などでよく語られているのが、現在の金融緩和路線の継続である。実際に黒田総裁は、再任されれば引き続き強力な金融緩和を継続する旨のコメントを出しているから、これは間違いないところだろう。
アベノミクスの目玉政策である日銀の異次元金融緩和、通称「黒田バズーカ」が、住宅ローンの超低金利化をもたらしたのはご存知の通り。マイナス金利や長短金利操作などの政策によって、現在の住宅ローン金利は史上最低水準にある。そして日銀は金利を現水準に維持するよう操作しているため、金利がさらに下がる可能性は低く、現在の金利はまさに”底”といえる状況にある。現行政策が継続すれば、当面は”底”金利の住宅ローンを使えるうえに、「金利が低いうちに」と慌てることなく購入を検討できることも大きなメリットだろう。
また、金融緩和によって金融機関の日銀当座残高が増えて、それが融資圧力となって世の中に出回るお金の総量(マネーストック)が増えると、だぶついた資金が不動産に向って、不動産価格は上昇しやすくなる。実際、近年のマンション価格高騰が始まったのは2013年であり、異次元金融緩和政策がスタートした時期と重なっている。不動産価格の上昇はこれから買う人にとってはデメリットに思えるが、不動産を所有してしまえば資産価値が維持されやすい状況とも言える。いくら安く買えても購入後に資産価値が下がりやすい状況よりは、有利と言えるだろう。
2/2