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2018.03.26

ライフ

モーリー・ロバートソン 〜うまく立ち回ろうとする奴は大嫌いなんです(笑)〜

知らなきゃ男が廃るが、知ってりゃ上がる。気にするべきは、顔のシワより脳のシワ。知的好奇心をあらゆる方向から刺激する、カルチャークロスインタビュー。

【モーリー・ロバートソン】

1963年、米国ニューヨーク州生まれ。幼少期に父の転勤に伴い日本へ。以降、日米両方の教育を受ける。米ハーバード大で電子音楽を専攻し、日本に帰国後はラジオパーソナリティとして活動。現在は国際ジャーナリスト、DJ、ミュージシャンとして多彩な活躍を見せている。
頭の回転の速さを示すように、会話がリズムに乗ると言葉が溢れ続ける。近著について「ファンの間では“白モーリー” “黒モーリー”という言い方をされています。テレビでは白いほうのキャラクターが強く出ていますが、本の中に描かれているのは黒いほうがメイン」とユーモラスに紹介し、微笑んだ。
生放送でも舌鋒鋭いコメントを放つ印象が強い。しかしこの著書を読めば、電波に乗り不特定多数の人に言葉が届けられるテレビ出演時を上回る、本当に言いたいことを書きつけた内容になっていることがわかる。
そこには、東京大学、ハーバード大学に同時合格し“天才”と讃えられながら、常に日本社会の枠からはみ出した“よそもの”だった少年時代や、人生を変えた音楽体験など、自叙伝的要素も多く含まれている。だが“僕のように生きれば楽しいですよ”といった類いの内容ではない。
なぜなら、アメリカ人の父と日本人の母を持つハーフというルックスをはじめとして、日本社会の枠からはみ出した存在が生き抜くには“名門大学ダブル合格”のような箔を付ける必要があるため。忖度していては、思うように生きることは難しかった。でも「苦難は多くあれど悔いの残らない半生だった」と胸を張る。
元々は強烈な個性を持つラジオパーソナリティとして名を馳せたが、現在は国際ジャーナリスト。しかしその立場も「川を渡るために船が必要なのと同じで、この世を生き抜く“手段”です」と、強いこだわりはない。「ジャーナリズムを専門的に学んだ経験はありません。ただ海外のニュースを原文で得られ、訳さずに読める。世界の中における日本を伝えられるし、それが今の自分の役目なのだと思っています」と言う。
とはいえ、数年前には日本社会の閉塞ぶりが居心地悪く、海外に活動拠点を移そうと考えたこともある。「その矢先にトランプ政権が誕生し、ヨーロッパの排外主義が起こるなど、世界中で不穏な動きがあった。それを見て、どこにも逃げ場はないなと感じたんです。ならば、日本から発信し続けることで世界が変わるかもしれないし、その可能性を探ろうと、とどまることにしました」。
自らアンダーグラウンドを活躍の場に選んだこともあった。近年は時代が彼を求めたのか、テレビなどメジャーな舞台から声がかかる。
「たとえ不器用でも、自分の目的意識を持って突き進む人は格好良いですね。一方、大嫌いなのは、うまく立ち回ろうとする奴(笑)」
自身の“格好良い大人像”のとおりに歩んできた。時代の要請に応じて登壇する檜舞台でも、舌鋒鋭く切り込み続ける勇姿に期待したい。

『「悪くあれ!」窒息ニッポン、自由に生きる思考法』


モーリー・ロバートソン/スモール出版/1500円
窮屈な枠組みから逃れ、自由に生きるための人生の指南書。パンクな生き方を実践するため東京大学を受験した少年期のエピソードなど、自叙伝的要素も絡め自身の哲学、現代社会が抱える問題や日本の現実に対する提言を収録。トランプ現象、パンク、ドラッグ、禅、人種差別など、あらゆるテーマに鋭く切り込んでいく。
 
森滝 進(MAKIURA OFFICE)=写真 美馬亜貴子=取材・文 空野 渋谷=取材協力


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