欲深いからこそ、手にするために挑戦を続け情熱に限りはない。その姿勢は、これまでの成功に安住せず、他者との交感により新たな価値観を見出そうとするコラボレーション時計にも相通ずるものがある。
ここでは、多彩な表現方法によりオリジナリティを高めた珠玉10作品を紹介。きっと欲張りな男をも魅了し、満足させるにちがいない。
TAG HEUER × KINGSMAN
タグ・ホイヤー/タグ・ホイヤー コネクテッド モジュラー 45 キングスマン スペシャルエディション
2015年にデビューした“コネクテッド”は、AndroidとiPhoneのOSに対応するスマートウォッチ機能に加えて、ブランドを代表する数多の文字盤デザインが再現できる。第2弾の「タグ・ホイヤー コネクテッド モジュラー 45」では、モジュールと呼ばれる時計本体に、ラグ、ストラップ、バックルの外装パーツを自在に選び、実に数千種類の組み合わせが楽しめるようになった。
限定モデルではベースの文字盤に、英国の敏腕エージェントの活躍を描くスパイ映画『キングスマン:ゴールデン・サークル』のロゴマークと文字が記され、10時10分には文字盤が振動したあと、Kを象ったロゴが浮かび上がる。
HUBLOT × RICHARD ORLINSKI
ウブロ/アエロ・フュージョン クロノグラフ オーリンスキー ブルーセラミック
フランスの現代アーティスト、リチャード・オーリンスキーとのコラボレーションにより、「アエロ・フュージョン クロノグラフ」にアートの世界観が注がれた。ブルーセラミックスのケースやベゼルに斬新なファセットを施し、見る角度によって異なる、美しい光の反射が楽しめる。
オーリンスキーは本来、こうした面カットで表現した野生動物の彫像で知られる。彼の芸術への無限の関心が、動きを止めない時計の針とリンクする魅惑のコラボレーションといえよう。世界限定200本。
BELL & ROSS × RENAULT
ベル&ロス/BR-X1 RS17
航空の世界のイメージが強いベル&ロスだが、一昨年にルノー スポールF1チームの公式タイムキーパーとなり、モータースポーツの最高峰のスターティンググリッドについた。
F1マシンとイメージを共通するカーボンケースに、レバー式プッシュボタンを備えたクロノグラフを搭載。そこには瞬時の操作性を実現するため、鮮やかに色分けされたステアリングから着想を得た、スポーティなカラーリングが施される。世界限定250本。
ROMAIN JEROME × SPIDER-MAN
ロマン・ジェローム/RJ × スパイダーマン
バットマンに次ぐアメコミヒーローモデル第2弾はスパイダーマンがモチーフ。ワーナー・ブラザース/DCコミックスに続いて、ウォルト・ディズニー/マーベルとの初コラボレーション作品になる。
3層による手巻きスケルトンのスカイラブ48をベースとし、鮮やかな赤いラッカーでスパイダーマンロゴが描かれるのだ。スケルトンバックのクモの巣はペイントではなく、立体感のあるメタライズ(金属膜化)加工により、奥行きを演出している。
OMEGA × IOC
オメガ/シーマスター オリンピック コレクション
1932年以来、オメガは28回ものオリンピックでオフィシャルタイムキーパーを務めてきた。今年のコレクションは、’76年のモントリオール&インスブルック大会で使われたストップウォッチから着想を得て、ツートンに色分けされた文字盤を採用。シンプルなアラビック数字と太い針は視認性に優れる。アクセントカラーのレッドはオリンピック五輪のカラーリングに則り、全5色で展開。文字盤外周に各色で施されたパルスリーダーは20秒ごとに3分割され、心拍数を容易に計算できる。
JAEGER-LECOULTRE × CASA FAGLIANO
ジャガー・ルクルト/レベルソ・トリビュート・スモールセコンド
「レベルソ」は1931年の誕生以来、今も基本スタイルを変えない傑出したモデルだ。今作では’31年と’35年のタイムピースから着想を得たブルー文字盤を再現し、アルゼンチンの名門ブーツブランドのカーサ・ファリアーノが手掛けた同色のストラップを装着。
カーサ・ファリアーノは1892年の創業以来、家族経営を続け、柔らかく滑らかで耐久性も高いレザーと、代々受け継いできたクラフツマンシップの伝統を守る。ポロ競技が出自の両者に相応しいパートナーシップだ。
AUDEMARS PIGUET × CAROLINA BUCCI
オーデマ ピゲ/ロイヤル オーク・ダブル バランスホイール・オープンワーク
「ロイヤル オーク」という偉大なヘリテージに、ジュエリーデザイナー、キャロリーナ・ブッチとのコラボレーションで、独自のケース装飾を施した。フィレンツェ技法と呼ばれる古の鍛金技術をベースに、ダイヤモンドを先端につけた道具でゴールドケースの表面を細かく仕上げ、ダイヤモンドダストのような美しい輝きを表現。さらにスケルトンダイヤルの奥には、ふたつのテンプを重ねることで等時性をより向上させる、2010年に特許を取得した独自の機構を搭載する。
ZENITH × COHIBA
ゼニス/クロノマスター エル・プリメロ 1969 コイーバ・エディション
2016年にブランド生誕150周年を迎えたゼニスは、同年に50周年となった最高級キューバ産シガーブランド、コイーバとのコラボレーションを発表した。
ハバナブラウンの文字盤には、イエローとブラックのコイーバのシンボリックなパターンが記されている。両者の共有する価値観とは、豊かな時の楽しみ。精緻に刻み続ける針や、シガーを嗜む芳醇な瞬間こそ、その象徴なのである。世界限定500本。
CHRONOSWISS × PLAYBOY
クロノスイス/レギュレータークラシック・プレイボーイエディション
昨年、創刊45周年を迎えたプレイボーイ・ドイツ版との45本の限定モデル。バニーロゴ入りのブラック&ゴールドの艶っぽいフェイスもさることながら、実は見どころはケースの裏面にある。
ケースバックのサファイアクリスタルでは、45年の間、誌面を飾ったセクシーなプレイメイトたちがピンナップガール風イラストで誘惑。著名イラストレーター、マイケル・プレースが描く45人の女性が、それぞれ1本ずつ用意されている。世界限定45本。
RAYMOND WEIL × THE BEATLE
レイモンド・ウェイル/マエストロ ザ・ビートルズ アビイロード リミテッドエディション
レイモンド・ウェイルが創業40周年を記念し、結成60周年のザ・ビートルズとコラボレーション。初登場は2016年で、即完売。これは熱烈な要望に応えた第2弾だ。レコードを模した針溝を刻んだ文字盤に、名盤『アビイ・ロード』のジャケットを思わせるメンバー4人のシルエットとバンドロゴを記す。
公式ロゴ付き専用ボックス入りで、ファンならずとも手に入れたい。世界限定3000本。
これまでにも、多くのコラボレーションモデルは存在した。しかし、ロゴのダブルネームやカラーリングといった変更がほとんど。
しかし、今やデザイン、素材など表現方法は実に多彩。よりオリジナリティを高めた作品が頻出している。それは、今回紹介したアイテムからもヒシヒシと伝わるはずだ。