ブランド、デザイン、はき心地、素材、加工、値段、etc.……デニム選びのポイントはいろいろだけれど、何にせよ妥協してはいけないのがシルエット。というわけで、シルエットが評判を呼んでベストセラーとなった名作7本を紹介する連続企画。
今回は、クリーンでソリッドなアー・ペー・セーの「プチスタンダード」。
アー・ペー・セーのプチスタンダード
ロック好きのスリムと違うスリムをはきたい
ワークウェアを出自とするせいか、武骨さや男っぽさの代名詞として語られがちなデニム。しかしA.P.C.の1本は、そうしたタフで骨太なジーンズとは明らかに面構えが異なる。ひと言で言えば、クリーンでソリッド。
5ポケットパンツのテンプレートともいえるウエストのパッチタグ、ヒップポケットのデザインステッチといった一連の装飾を排した。さらにシルバーカラーで統一されたボタンとリベット、橙色の糸だけを使った潔い縫製、そして30年にわたってブランドの顔を担ってきた濃紺の生地が相まって、その佇まいは至極ミニマルだ。
そんなA.P.C.のデニムを選ぶうえで決まって名前の挙がるシルエットが、レギュラーストレートの「ニュースタンダード」、それをベースに股上を浅く、ヒップとレッグラインをコンパクトにしたタイトストレートの「プチスタンダード」、そして双方の中間的なテーパードフィットとなる「プチニュースタンダード」だ。いずれも名称が似ているため混同してしまいがちだが、これを機に改めて整理して覚えておきたい。
BACK SIDE
なかでも最もスリムな「プチスタンダード」は、日本人の平均的な体型に合わせやすいということもあり、ベストセラーへと結びついた。脚線をなでるようにシャープなシルエットは、ロック好きご用達のピタピタなそれとは一線を画す、そこはかとないインテリジェンスや品位さえも漂わせる。モードの空気をいっぱいに吸い込んだフレンチブランドのエスプリがそうさせるに違いない。
街男ユースケと海男マーシーはA.P.C.のプチスタンダードをこうやってはく!
街男ユースケの場合「40代後半のモード感とは」
デザイン性のある黒いアウター選びは、シャレたいときの定石。これでパンツまで遊ぶと40代的にちとイタい見た目に。そこでデニムを。色落ち系はコントラストが強すぎるからリジッドがベスト。細くて、くるぶし丈で今っぽくいこう。
海男マーシーの場合「マーシー流のきれいめ」
リジッドデニムにデザートブーツ。そしてトップスはアースカラーでまとめる。色や柄は挿さない。そしてスキニーシルエットが、きれいな感じの要になっている。
A.P.C.が作ったニューシルエットモデル
ストーンウォッシュのテーパードシルエットが逆に新鮮!
たっぷりと深く取られた股上、十分な余裕を持たせた腰回り&ワタリに対し、足元へ向かうにつれてスッキリ絞られた「ジーンバギー」。このブランドにしては新鮮なテーパードシルエットも、’80~’90s的なストーンウォッシュの表情も、オーシャンズ世代にとっては懐かしさを抱かせるものだが、巡り巡ってこの感じが改めて新鮮に思えるから、やっぱりデニムって面白い!
岡田 潤(BE NATURAL)=写真(人物) 山本雄生=写真(静物) 石黒亮一=スタイリング yoboon(coccina)=ヘアメイク