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2018.02.21

あそぶ

マンガ『へうげもの』を読み解く。趣味に生きるのも悪くないかも

「大人のCOMIC TRIP」を最初から読む
忙しい現代人こそ「趣味」を持つべき! 趣味に生きた男の人生
仕事に追われる人生を豊かにするもの。そのひとつが「趣味」だろう。好きなことに没頭することでストレスが発散され、人間としての魅力も磨かれる。仕事に熱中するのもいいけれど、たまには息抜きをする余裕を持っていたい。
そんな「趣味」「好きなもの」に命を賭けたひとりの男の姿を描いた作品がある。それが『へうげもの』(山田芳裕/講談社)だ。
『へうげもの』(山田芳裕/講談社)
本作は2005年より週刊マンガ誌「モーニング」にて連載がスタートし、17年11月に完結したばかり。「第13回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞」や「第14回手塚治虫文化賞マンガ大賞」など名だたる賞を受賞し、11年にはアニメ化もされた人気作だ。
舞台は、織田信長や豊臣秀吉らが群雄割拠する戦国時代。主人公は武将・古田織部だ。戦乱の世が描かれている一方、テーマとなるのは武将たちの闘いではなく、あくまでも織部が没頭していく「趣味」の世界。
彼が心血を注いで追求したのが、茶道や茶器、芸術といった分野。武人として生きるのが是とされる時代において、己が道を探求する「数寄者」として生きることを選ぶのだ。
戦乱の世に生きる武人を現代社会のサラリーマンと置き換えるのならば、織部のような数奇者は仕事よりも趣味に生きることを選んだ人たち、と言えるかもしれない。そう考えたとき、彼の生き様を「負け犬」と捉える人も少なくないだろう。
けれど、趣味に命を賭ける古田の姿は実に生き生きとしており、なによりも豊かだ。本作を読み進めると、織部は数寄の力で政治的にも一目置かれる存在になっていく。一事が万事。好きなことを追求する生き方も、突き詰めることで得られるものは大きく、また評価の対象となるのだ。本作を読んでいると、自然とそのような気持ちが芽生えてくる。
現代は戦乱の世ではないが、常に気を張ることに疲れてはいないだろうか? そんなときは、本作における織部の生き様から、「趣味」の大切さを感じ取ってもらいたい。好きなことに没頭するという時間も、決して無駄ではないのだから。
五十嵐 大=文
’83年生まれの編集者・ライター。エンタメ系媒体でインタビューを中心に活動。『このマンガがすごい!2018』では選者も担当。


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