OCEANS

SHARE

  1. トップ
  2. たべる
  3. 下北沢の横丁で、ハイジのような看板娘と絶品カレーに悶絶した

2018.02.15

たべる

下北沢の横丁で、ハイジのような看板娘と絶品カレーに悶絶した

看板娘という名の愉悦 Vol.3
好きな酒を置いている。食事がことごとく美味しい。雰囲気がよくて落ち着く。「行きつけの飲み屋」を決める理由はさまざま。しかし、なかには店で働く「看板娘」目当てに通い詰めるパターンもある。もともと、当連載は酒を通して人を探求するドキュメンタリー。店主のセンスも色濃く反映される「看板娘」は、探求対象としてピッタリかもしれない。
多くの飲み屋には、趣向を凝らせた“看板メニュー”がある。今回は、まずこの写真を見てほしい。
ただならぬ雰囲気をまとうカレー
この魅惑的なカレーを食べられるのは下北沢のバー。駅南口を出て数分歩くと、老舗の劇場「ザ・スズナリ」に着く。
劇場には飲み屋横丁が併設
店の名前は「バッキンガム宮殿」。大胆にも、イギリス王室の宮殿の名を冠している。
とはいえ、料金は庶民感覚
近衛兵よろしく背筋をピンと伸ばしてドアを開けると、そこは小さなバッキンガム宮殿だった。
実物を見たことはないが、こんな感じなのでは
もちろん、女王ならぬ看板娘もいる。
いらっしゃいませ〜
こちらはミレーさん(24歳)。「慌てて家を出たから化粧する時間がなかった〜」と照れる彼女によれば、本日のファッションテーマは「アルプスの少女ハイジ」。ロンドンからだいぶ東に移動したが、看板娘としては大正解だろう。
さっそく、お勧めの1杯をいただく
「養命酒をソーダで割った『シモキタボール』です。下北沢でハイボールといえば、これなんですよ」
お値段600円
あ、美味しい。そして、なんとなく体にもよさそうだ。取材に同行した知人は「つい、気になって」と言いつつ、コブラとサソリを漬け込んだブランデーを注文していた。こちらは1杯1500 円。
ひと口飲んでみたが、想像通りのキツさ
ちなみに、ミレーさんの本名は「未玲」と書く。
「おばあちゃんが付けてくれました。中国に玲水晶という鉱石があって、磨けば磨くほど輝くようにっていう意味が込められているそうです」
24歳の時点でどれぐらい磨けたのかを聞いてみると、「うーん、2割ぐらいかな(笑)」。
隣の系列店「Gijido」と小窓でつながっていた
そう、この店は下北沢で4軒の飲食店を展開する「呑もうぜグループ」の一員なのだ。
店内には「呑もうぜ」ステッカーも
ミレーさんは大阪出身で、昨年4月に上京したばかり。ルミネ立川でマリメッコの販売員として働いていたが、ひょんなことからここで働くことになった。
「大阪から遊びに来ていた友達と下北沢を散歩してたら、この店の前でオーナーさんから『1杯呑もうぜ』って誘われたんです。ノリの良さを気に入られたのか、気付いたら『呑もうぜ』が『働こうぜ』に変わっていました(笑)」
趣味は写真を撮ること
当初は週1日のアルバイトだったが、昨年末にマリメッコを退職し、現在は「呑もうぜ」1本だという。
見上げればバッキンガム
栓抜きもバッキンガム
「あ、そうや。『バッキンガム宮殿』っていうバンドがあって、そのメンバーの方たちが飲みに来てくれたんですよ」
『イカ天』に出たこともある人気バンド
バッキンガム尽くしとなった今、2杯目はバッキンガムっぽいお酒を飲みたい。「ありますよ〜」と出てきたのは、エリザベス二世女王のご尊顔がプリントされたボトル。女王の60歳記念で作られた特製ボトルだった。
高貴なスコッチをハイボールで(1200円)
じつにバッキンガムである
ここで、ミレーさんが唇にリップを塗った。女性がリップを塗ったらキスOKのサインだと思っていた時期もあった旨をお伝えしたところ、「それ、ヤバいですね」と真っ当な感想をいただいた。
単に乾くからです
下北沢という土地柄、ユニークなお客さんも多いという。
「いつもギターを生で持ち歩いている男性がいますね。ネックを片手でつかんだ状態で。たぶん、ケースもストラップも持っとらんから? あと、ひたすら牛乳を飲んで終電で帰る人とか(笑)。とにかく面白いお客さんばかりで、毎日楽しいです」
ミレーさんはとにかくよく笑う
バッキンガムを十二分に堪能したのちに、冒頭でご紹介した締めのカレーを注文。系列店「ARENA」の店長で、「下北沢カレーフェスティバル」の代表でもあるカレーまんさんが、バッキンガム宮殿用に開発したレシピとのこと。
「宮殿カリー」(800円)
「これは特別にランチ仕様で、夜用はトッピングが少ないシンプルなカレーです。みんな、夜遅くなると食べたくなるみたい。ひとりが注文すると店内に匂いが充満するから『俺も俺も』ってなります(笑)」。
バーで食べるカレーの概念を超えている。専門店を出してもいいレベルの味だ。すっかり満足してお会計。最後に、ミレーさんからのメッセージを。
独特の作風だった
取材・文=石原たきび
【取材協力】
呑もうぜグループ
http://nomouze.jp
 


SHARE

次の記事を読み込んでいます。