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取材した広告代理店では、担当クライアントのキャンペーンの準備をしているSさんがインフルエンザの兆候がありながら強行出社。何とか準備は滞ることなくできたようですが、数日後には同じ職場でインフルエンザが大流行。働き方改革で残業は減ったものの、風邪で休んでもいいような働き方にはなっていないようです。
人が急に休んでも問題が起きないくらいに情報が共有されていて問題なくカバーできる、そんな万全の体制が整備されている会社なんて、実際のところかなりまれでしょう。インフルエンザなど感染力の強い病気などで「自宅待機」せねばならないときに、大事な仕事にどのように対処すべきか、その方策を考えるのが現実的でしょう。
ちなみに通常の季節性インフルエンザの場合は法律的な縛りはありませんが、新型インフルエンザの場合には法律で会社に出勤させてはならないとの定めがあり、自宅待機することと決められています。
ただ、季節性インフルエンザであっても、集団感染を避けるため自宅待機を指示する会社も増えています(扱いは会社により違います)。
自宅待機期間は、大体は解熱後2日ほど。解熱後もウイルスが残っており、人にうつす可能性があるためです。学生に適用される学校保健安全法に基づいて、「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日を経過するまで」を出勤停止期間と、厳格に定める会社もあるかもしれません。
ただ、実際のところは早期の受診・服薬などによって体の具合自体は早々に回復してしまい、待機期間に時間を持て余す人もいるようです。そんなときに、
「仕事が気になる、本当に休んでいて大丈夫か?」
と心配になる人が相当にいるようです。

パンデミック対策としてのリモートワーク

こうした状況で会社に出勤しないで仕事をする方法として検討しておきたいのがリモートワークです。在籍する会社のオフィスではなく、自宅やカフェなど会社から離れて(=リモート)インターネットやメール、電話などを活用しながら勤務する形態のこと(もちろんインフルエンザの場合、自宅以外での仕事は厳禁ですが)。 在宅ワークやテレワークという言葉が使われることもあります。
育児中の女性の働き方として認知度が高いですが、2010年頃に新型インフルエンザが大流行し、全世界で1万4000人以上の死者を出したときも、リモートワーク導入の機運が高まりました。出張の制限や自宅待機などの事態を想定し、日常業務を継続するための基盤としてテレビ会議やWeb会議などを活用するといったことが、大いに検討されたのです。
例えば、営業全般の決裁権限を持つ社員が発熱。出勤前に病院に立ち寄り診察をうけたところ、新型インフルエンザに感染しており、自宅待機を命じられることに。ところが数日後に重要な案件への対応を審議する会議が予定されていました。そこでWeb会議で自宅から会議へ出席して、決裁を行う……というようなことが可能になります。
残念なことに、数年前に大騒ぎになったインフルエンザ大流行の際は、新型インフルエンザが思いの外、弱毒性であったため、パンデミック対策としてのリモートワーク熱は冷めてしまったようです。
ただ、今年のような流行を踏まえれば自宅待機社員の増加による「プチパンデミック」は起きる可能性は十分にあります。その対策として、リモートワークのインフラ整備を今こそ真剣に検討し、実行すべきかもしれません。
こうしたインフルエンザパニックが、来年も起きないとは限りません。会社としてぜひパンデミック対策としてのリモートワークを検討してみてはいかがでしょうか?
 
高城 幸司 : 株式会社セレブレイン社長
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記事提供:東洋経済ONLINE


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