日中晴れていても夜はかなり冷え込む今の時季、ニットは欠かせないワードローブとなる。でも、保温性優先で肉厚なアイテムを重ねれば野暮ったくなったり着膨れしたりと、いろいろ弊害が出てきそう。種さん、そこからの巧い回避術ってないですか?
「種カジのタネあかし」を最初から読む極太糸のニットコートに、セーター&カシミヤ混のリブパンを合わせた今回のコーディネイト。モコモコしていて超あったかそうだけれど、ニットのオンパレードだとどうも着膨れ感が心配になる。でも、グレーのグラデーションでまとめたため、柔和さに加え、無彩色特有のシャープさからスマートな見た目も演出。この両得感こそ、種さんが「冬の夜にはグレーは効く!」と太鼓判を押す理由だ。
しかも、種カジの基本の“キ”ともいえる、ゆったりしたトップスとシャープなボトムスのコントラストを効かせたシルエットバランスにより、さらにスマートさに拍車をかける。ダメ押しは“グレージュ”の隠し味。これをニットとストールに取り入れることで、ご覧のごとく簡単にトーンに変化がつけられるのだ。さらにブーツは、もともとベージュではあるが履き込んで“セルフ・グレージュ”に進化させた一足なんだとか。
全身ニットでもグレイッシュにまとめれば、リラックスできつつもダラシなく見えない。まさに計算づくの組み合わせだ。
グレッグ ローレンのコートには、袖口や裾にダメージ加工が施されている。聞けば、意識したのはブルジョアとボヘミアンをMIXした“ボボズ”スタイルとか。上質な服だからあえてダメージを。キメキメを回避する効果的な演出。
足元はイタリアの名門グイディのスエードブーツ。もともと汚れ加工が施されていたベージュの一足を、雨の日に履くなどして、さらに汚して今の味に仕上げている。こんなところにも“ボボズ”のエッセンスが。
最近愛用するキーホルダーは愛犬トーフの首輪のお下がり。デザインもいいため、何かに使えないかと思案して閃いたアイデア。玄関のドアノブに掛けているので、ファッションだけでなく、外出時に“カギがない!”なんて朝のトラブル回避にもひと役買っているんだとか。
淡白になりがちなワントーンではあるが、濃度高めのアウターで引き締めつつ、インナーには柄ものを投じながらヌケ感を演出することで表情豊かに。ちなみにこのインナーは、モロッコの伝統的なラグ、ベニワレンをモチーフにしたもの。実はリビング用のラグを探しているときに遭遇して思わず衝動買いしたという。細部にまでタネが仕掛けられている種さんのスタイリング。参考にしたい要素がてんこ盛りだ。
PROFILE
たねいちあきら●1972年生まれの44歳、東京下町出身。長年勤め上げたビームスを退社し、現在はフリーランスとしてブランドのコンサルティングやプロダクトのディレクションなどを手掛ける。今回は久しぶりに愛犬のトーフと共演。種カジのこぼれネタがポストされるインスタグラム(@taneichiakira)もチェックして!
山本 大=写真