2018年に創業10周年を迎え、人気をますます高めているデニムブランド、デンハム。その設立者であるジェイソン・デンハム氏が「デニムと日本に対する愛」について語ってくれた。
デンハムとは?
2008年にデザイナーのジェイソン・デンハム氏が設立したブランド。テーラーメイドウェアを彷彿させる高いフィット感と、エッジの利いたデザイン性を両立したプレミアムデニムをコレクションのベースとし、アウターやトップス、アクセサリーなどもラインナップする。ブランドの拠点であるオランダ・アムステルダムをはじめとして、ドイツ、ベルギー、シドニー、イギリス、 日本など世界20カ国以上に直営店を展開している。
「14歳のときに買ったデニムに今もときめくんだ」
2017年4月20日にオープンした「ギンザ シックス」。銀座エリアで最大のこの商業施設に、オランダ生まれのデニムブランド「デンハム」のショップもオープンしている。ファンにはお馴染みの「デニムラボ(※1)」を備え、買い物がてらコーヒーを楽しめるカウンターも用意する旗艦店だ。さらなる躍進を遂げた今年、設立者にしてデザイナーであるジェイソン・デンハム氏が、ブランドの歩みとデニムに対する思いを語ってくれた。
「1992年、当時U2の衣装を製作していたジョー ケイスリー ヘイフォードのワークショップに、インターンとして就職したんだ。それが僕のキャリアの始まり。よく徹夜でデニムにリベットを打っていたよ……。今思えばとてもいい経験だったね」。
その後ぺぺジーンズ(※2)でプロダクトマネージャーとしてキャリアを積んだのち、’98年に独立。アムステルダムにて、「クリニックプラス」というデニムのプロデュース会社を立ち上げる。そこでベン シャーマンやケンゾー、リーバイスといったブランドのデニムを手掛け、デニム業界で知られる存在となった。
「理想のデニム作りを追求したい」という思いを募らせたデンハム氏は、2008年、満を持して自身のブランドを始動。メンズウェアにおける世界最大のファッション見本市、ピッティ・ウォモに出展する。豊富な知識とテーラーリング技術に裏打ちされた品質の高さを備え、モダンにアレンジされたデザインのデニムは、各国のバイヤーたちの間でたちまち話題となった。
「ある日本人バイヤーが気に入ってくれて、すぐに日本での販売が決まったんだ。僕が大切にしている小さなこだわりを、世界一のデニム生産国である日本の人たちがきちんと評価してくれたことが、何よりうれしかった」。
デンハム氏は「神は細部に宿る」と言う。ミリ単位でシルエットのバランス調整を繰り返し、生地からボタン、ステッチ糸までとことんこだわる。こうした微差を最も理解してくれたのが、日本のデニム作りに携わる人々であり、日本のデニムファンだという。
「ブランドのコンセプトは“デニム・インテグリティ”。これはデニムに対する真摯な姿勢のこと。過去のモノ作りや技術に敬意を払いつつも、常に新しい可能性を模索する。そうして、人々にとって実用性に優れた服を生み出していく。これが僕の信念だ」。
湧き出るインスピレーションの源は旅やアート、写真などなど。だが最も重要なのは自身が収集してきた膨大な数のヴィンテージデニムだという。
「子供の頃からデニムが大好きで、頭の中はデニムのことばかりだった。デニムの魅力に目覚めたきっかけは、14歳のときに買ったリーバイスの501。今でも大事にとってあるし、このボロボロの501を見ると胸がときめくんだ。そうそう、デニムとデンハムって発音もけっこう似ているだろう?」。
そう言って笑顔を浮かべるデンハム氏。今最も勢いのあるデニムブランドを率いるこの人物は、もしかしたら世界一のデニム好きかもしれない。
デニムラボ(※1)デンハムのショップならではのスペース。ヴィンテージのミシンで裾上げし、はき込んだデニムを手洗いするサービスを行う。「ギンザ シックス」の店舗には洗ったデニムを乾かすドライルームもある。
ペペジーンズ(※2)1973年、ロンドンで創業したデニムブランド。ストレッチ加工を得意とし、メンズ、ウィメンズ、キッズまで多彩な製品をラインナップする。現在、世界約40カ国で400以上の店舗を構えている。
押条良太(押条事務所)=文