「不動産の噂の真相」を最初から読む不動産の噂の真相Vol.11
オーシャンズ世代にとって“避けては通れない未来”のひとつに、「住まいをどうするのか」というテーマがある。結婚し、子どもが生まれ、やがて巣立っていく――そんな人生の物語をつむぐ舞台=住まいについて、実は私たちはそこまで深い知識を持っていない。なんとなく周りの意見やメディアの見出しやウワサ話に踊らされてはいないだろうか。この連載では、元SUUMO新築マンション編集長が、世の中に出回っている“不動産のウワサ”について徹底検証。信じるも信じないも、あなた次第です。
東大生の過半数がリビング学習していた、というアンケート結果が根拠?
先日、大学センター試験が行われたが、2月初旬には多くの私立中高一貫校の入学試験が控えているなど、今はまさに受験シーズン真っただ中だ。この時期になるとなぜか思い出すのが「リビングで勉強すると子どもの頭が良くなる」説だ。ネットを見れば、この説を唱えるサイトがいくつも見つかるが、多くのサイトで説の根拠としているのが、東大生を対象にしたあるアンケート調査の結果だ。
その調査によると、アンケートに答えた東大生の過半数が、自宅で学習した主な場所をリビングと答えていて、自分の部屋と答えた学生は3割程度だったそうだ。この調査結果をもって、リビングで学習すれば子どもの頭が良くなる(はず)、と多くのサイトで主張されているわけだ。一見、もっともらしいが、リビング学習が多いのは、単なる現代のライフスタイルの傾向かもしれず、他の大学の学生に同じアンケートをとっても同様の結果になりはしないか? という疑問も浮かぶ。しかし、なぜか調査対象は東大生のみで、他大学の学生と比較したデータはない。したがって、この調査結果だけで「リビング学習をしたら頭が良くなる」と読み解くのは統計学的に無理があるし、強引に過ぎるのではないかと感じてしまう。
そんなわけで、筆者はリビング学習自体を否定するつもりはさらさらないが、リビング学習で頭が良くなるとする説には懐疑的だ。サイトによっては、わからないところをすぐに質問できるとか、親が近くにいると安心して勉強に集中できるとか、親と会話が増えてコミュニケーション力がつくとか、調査以外のリビング学習の利点も挙げられている。が、物理的に質問がしやすいこと以外は、やはり科学的な根拠や学力向上との因果関係が不明だ。質問のしやすさにしても、親が問いに正しく答えられなければ逆効果になりかねないわけで、正直、後付けの理屈に見えてしまう。
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