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マイホームの買い換えで損失が出たときの「譲渡損失」減税も見逃せない

他にも、マイホームを買い換える場合に、元の家の売却で損失が出たときは、損失額を最大4年間に渡って所得と相殺できる制度もある。損失額は正確には「譲渡損失」と言い、「譲渡損失=売却価格-購入価格-購入諸費用-売却諸費用」で計算できる。簡単に言えば、購入と売却を通じて、入ってきたお金から出ていったお金を引いた額だ。元の家に住んでいる間に払ったローンの利息や固定資産税は損失には含まれないが、今の低金利なら当初10年間は先に説明した住宅ローン減税でほぼチャラになる。つまり、購入から10年に限ればこの計算式による譲渡損失が、実質的な住居費負担といえる。
たとえば、価格4000万円(購入諸費用170万円)で買った家を、10年後に3200万円で売却(売却諸費用110万円)する場合、3200万円-4000万円-170万円-110万円=-1080万円が譲渡損失となる。これを所得(年収ではなく、年収から各種控除を引いた額)と相殺できるので、所得が500万円なら、2年間は所得ゼロ扱いとなり、なんと2年分の所得税と住民税(所得割)が無税になるのだ。それでも相殺しきれない80万円は3年目の所得から差し引いてその年の所得税や翌年の住民税が計算されるので、やはり減税になる。
この例のように、10年も住めば売却額が購入価格の8割程度に値下がっても不思議ではなく、家の買い換えで譲渡損失が1000万円超に及ぶのは決してレアケースではない。ただ、諸費用を含めて1080万円の損失も10年で割れば、1年あたり108万円、月額なら9万円で家賃レベルでしかない。いや、価格4000万円クラスの家を賃貸したら、家賃9万円では済まないだろうから、4000万円の家を買って10年後に1080万円の損失を出しても、結果的に10年間の実質的な住居費負担は同等の家を賃貸するより軽く済むことになる。それなのに、買い換えた人は2年分の所得税+住民税+αの減税を受けられて、賃貸に住む人は減税を受けられないのだ。
これらの現行住宅税制は、賃貸派の人にとってきわめて不公平と言えるが、国策である以上、文句を言っても仕方がない。引っ越しの自由度やローンを抱えない気楽さをとって賃貸を選ぶのもいいが、いっそマイホームを買って国策を味方に付けたほうが合理的という考え方もある。どちらを選ぶにしても、家賃とローン返済の表面的な比較だけでなく、税金という視点を忘れずに検討すべきだろう。
取材・文/山下伸介
1990年、株式会社リクルート入社。2005年より週刊誌「SUUMO新築マンション」の編集長を10年半務め、のべ2700冊の発刊に携わる。㈶住宅金融普及協会の住宅ローンアドバイザー運営委員も務めた(2005年~2014年)。2016年に独立し、住宅関連テーマの編集企画や執筆、セミナー講師などで活動中。
 


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