OCEANS

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――日商岩井は、ナイキを強く支援していますね。
この本を読んで驚いたことが3つあります。1つは、ナイキが自分の想像以上に歴史の浅い会社であること。2つ目は、ナイキが日本の企業(オニツカ)によって始まったこと。
3つ目に、特に驚いたのが、日商岩井がナイキ(ブルーリボン)を助けたことです。当時のナイキはアメリカの銀行にさえ見放されてしまうような会社です。最終的に3兆円企業となるとはいえ、初期のシーズの段階で同社に目をつけて徹底的にサポートした理由は何なのか。日商はいったいどこで利益を上げていたのか。
しかも、本には書かれていない1980年以降にも、日商はナイキを助けています。日商は、日銀総裁を務められた速水優氏が社長をしているようなしっかりした会社でした。そんな会社が、なぜそこまで。投資家として、たいへん興味があるところです。

ナイトのエネルギーがナイキを世界的な企業にした

――あえて推測すると、なぜ、日商はナイキを助けたのでしょうか?
フィル・ナイトという異才を買った、その人物の人間的な魅力にひかれたということかもしれません。また、靴という商品でも、ナイキという会社が販売すれば多くの利益を生むのではと考えたのではないでしょうか。
――そんなに危うい経営のナイキが、なぜ世界的企業になれたのでしょうか?
創業者が「フィル・ナイト」だったからでしょう。それしかない。彼は陸上選手でしたが、偉大な選手になるという夢はかなえられなかった。でも、スニーカーという製品で夢を果たそうとした。それは、「このシューズなら僕はもっと速く走れる」というアスリートの夢を実現しようとしたのではないでしょうか。
彼は、ビジネスとしてはめちゃくちゃなことをしています。でも、自分の目指すスニーカーを作って世に広めるというところは、筋が通っていて揺るぎがない。その根底にあるのは、1つのものに情熱を注ぎ続けるエネルギー。そのエネルギーの強さを、否応なしに感じました。靴のビジネスを続ける資金を得るために、副業で会計士までやっていたなんて、脱帽です。
「たまたまうまくいった」という言葉がありますが、偶然だけでうまくいくことはない。根本的なエネルギーが必要です。成功するためにいちばん重要なものは何か。頭がいいとか、もともとおカネを持っているということよりも、「何かを創り上げたい」というエネルギーでしょう。
私はこれまで、起業家などいろいろな人たちに会う機会がありました。何かを成し遂げる人は、「これがやりたい」という自分の主張があり、エネルギーをもっています。フィル・ナイトは、そうしたエネルギーが相当に強い。そして、その強いエネルギーは彼がもともと持って生まれてきたものだなとも思う。きっと彼は、何をやっても成功したとさえ思います。


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