オシャレは楽しい。それは間違いない。ただ要因を問われるとなんとも臆してしまう。でも、これらのアイテムを見てハと気づいた。そう、オシャレを楽しくするのは、驚きやユーモア、そしてカワイらしさだ。
「メゾン キツネ × ポーター」のマルチケース
カワイイものにときめくのは誰しも同じ。じゃれる仔犬もモノ言わぬ小品盆栽も、ただただカワイイから心を奪われるのだ。では服回りの“カワイイ”は? 何がオッサンに許される(自分でも許せる)かは考えるほどに難しいが、今回、ひとつの光明を得た気がする。
メゾン キツネのシグネチャー、フォックスパッチをあしらったマルチケースだ。見覚えのあるオリーブ色のボディと金ファスナーは思ったとおりポーターのもの。これにピンときた。人目に触れる機会の少ない小物こそ、僕らの“カワイイ”のドレスコードかと。褒めてもらえたらうれしいけど、気付かれなくても大丈夫。密かに愛でてほっこり。“見せたい欲”は、わりと前に卒業してるんだ。
「タコライド」のキャップ
パロディは思わずニヤリとなればOK。それ以上でもそれ以下でもなし。で、その絶妙な間合いのパロディアイテムが方々で話題となっているタコライドから届いたのが、このキャップ。
言わずもがな最大のポイントは中央のワッペンだ。そう、あの「NASA」のロゴにそっくり。ちなみに仕様を眺めてみれば、ブリム基部のロープや額裏の型崩れ防止ディテール「前立メッシュ」と、狙い済ました昭和感が。でもなんて「SOBA」なの!? もしや人類と宇宙との距離をぐっと“ソバ”まで縮めてくれた、偉大なるアメリカ航空宇宙局に対するリスペクト……いやそれは、ないか。
「リー × アメリカンラグ シー」のGジャン
アメカジに馴染んできた方ならお察しだろう。裏返されたのは、裏ボアの名作デニムジャケット「ストームライダー」である。
ユニークすぎでは? と眺めつつも、いざ羽織ってみるとなかなかどうして、いい感じ。ボアのモコモコがフリースライクでもあり、それでいてGジャンの風情も残し、新鮮な表情を生み出している。「ボアの保温力って裏地にあるからこそでは?」という懸念も無用。熱が逃げるのを空気の層が防いでくれるのか、ちゃんと暖かい。色展開も気が利いていて、黒ボアは街男、白ボアは海男向きだろうか。新たな名作の予感がするな。
シンプル嗜好の大人カジュアルが蔓延している今は、こういった楽しさもなりを潜めている気がする。それじゃ、おしゃれを存分に楽しめないってもの。これらのアイテムで、自由なおしゃれを満喫しようじゃないか。
鈴木泰之=写真 鈴木淳子=スタイリング
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